休職を経ての復職は、人生の大きなターニングポイントです。
「今度こそ大丈夫だろうか?」「すぐに再発してしまったらどうしよう」と不安に感じるのは、ごく自然なことです。
最新の精神医学や産業医学の知見では、復職を成功させ、再休職を防ぐためには、
「焦らないこと」と「段階を踏むこと」が最も重要だとされています。
回復途中で無理に復帰すると、かえって病状を悪化させ、再発のリスクを劇的に高めてしまうからです。
ここでは、再発しにくい復職のタイミング、つまり「復職準備性が整ったサイン」を、
具体的な最新情報に基づいてブログ風にご紹介します。
医師・産業医が重視する「3つの安定サイン」
復職の可否は、主治医からの「復職可能」という医学的な判断に加え、
職場の状況をよく知る産業医や会社側の意見を総合して判断されます。
特に再発予防のために、以下の3つの安定した状態が確認されることが不可欠です。
1. 規則正しい「生活リズム」の安定
何よりもまず、仕事で働くことを想定した規則正しい生活リズムが、安定して継続できていることが大前提となります。
勤務時間に合わせた起床・就寝の確立
以前の勤務開始時間に合わせて起き、日中に活動し、夜間に適切な時間で寝られるサイクルが定着しているかを確認します。
特に、昼夜逆転の状態が続いている場合は、復職を見送る最も大きな理由になります。
適切な睡眠時間の確保
服薬の影響も含め、日中に強い眠気を感じることなく、
業務に必要な注意力・集中力が保てるだけの質の高い睡眠が取れていることが重要です。
継続的な達成
この規則正しい生活リズムを、少なくとも2週間以上、安定して週5日(実際の勤務日数)維持できているかどうかが、具体的な判断目安の一つとされています。
2. 「活動性・遂行能力」の回復
次に、仕事に取り組むための体力や集中力が、日常レベルで回復していることが必要です。
通勤の予行演習のクリア
復職後の通勤時間帯に、一人で安全に職場またはリワーク施設などへ向かい、往復するだけの体力が回復しているかを確認します。
業務に必要な集中力の回復
長時間、一定の作業に取り組める集中力、記憶力、判断力が回復しているかを確認します。
休職中に、図書館通いやリワークプログラムへの参加などで、
「決まった時間内で、業務に類似した作業」を継続して行えているかが、この能力を測る指標となります。
疲労の回復
作業による疲労が、翌日までに十分回復し、翌日の活動に支障をきたさない状態であることが重要です。
3. 精神症状の「寛解(かんかい)」と「継続的な治療」
症状そのものが改善し、さらに再発を防ぐための体制が整っていることが欠かせません。
症状の十分な改善
抑うつ気分、強い不安、意欲の低下などの主要な症状が、
日常生活に支障のないレベルまで落ち着いている状態(寛解状態)である必要があります。
服薬・通院の継続
症状が良くなったからといって、自己判断で服薬や通院を中断していないことが極めて重要です。
再発予防のためには、服薬や定期的な通院を「治療計画」として継続することが不可欠です。
自己判断での中断は、再発リスクを最も高める行為の一つです。
復職を「焦る」心理が再発を招く
最新の研究や臨床経験からは、
1. 「経済的な不安」と「責任感」のプレッシャー
「休職が長引くと経済的に苦しい」「会社や家族に迷惑をかけている」という罪悪感や責任感が、
回復が不十分な状態での復職を強く希望させる原因になります。
しかし、この焦りによって十分な回復期間を経ずに復職すると、すぐにキャパシティを超えてしまい、短期間で再休職に至るリスクが高まります。
再休職は、さらに治療期間を長期化させ、キャリアにもより大きな影響を与えるため、「急がば回れ」の意識が重要です。
2. 寛解と機能回復の誤認
気分が少し上向きになり、日常生活が送れるようになると、「治った」と自己判断しがちです。
しかし、
このギャップを埋めるための準備が、「リワーク(リターン・トゥ・ワーク)プログラム」や「試し出勤制度」なのです。
医師や専門家は、単なる症状の回復だけでなく、職場復帰のための機能回復(対人関係、集中力、疲労耐性など)がどこまで進んでいるかを慎重に見極めます。
再発しにくい「段階的な復職プロセス」
再発を防ぐ復職は、特定の「タイミング」だけでなく、その後の働き方も含めた「段階的なプロセス」全体で考える必要があります。
1. リワーク・試し出勤制度の活用
多くの企業や医療機関では、復職直前の準備として、以下のような支援を活用することを推奨しています。
リワークプログラム
専門の施設で、認知行動療法やストレス対処法を学びながら、実際のオフィス環境に近い状況で集中力や体力、対人スキルを回復させる訓練です。
試し出勤制度
実際の職場に、短時間・短期間だけ試験的に出勤し、身体的な疲労や精神的な負荷をチェックする制度です。
これらの準備期間を通じて、「復職後の業務負荷に耐えられるか」というシミュレーションを事前に行い、問題点を洗い出しておくことが、再発予防に直結します。
2. 復職直後の「働き方」の工夫
復職が決まった直後も、再発リスクが最も高い「危険な時期」です。
時短・軽作業からのスタート
最初から休職前と同じフルタイム・フル業務に戻るのは避けるべきです。
最初の数週間から数ヶ月間は、勤務時間の短縮や、責任やプレッシャーの少ない業務への限定など、「段階的な負荷調整(慣らし運転)」を行うことが必須です。
残業の厳禁
復職直後の数ヶ月間は、残業を厳禁とし、終業時刻になったらすぐに退勤できるような周囲の配慮と仕組みが求められます。
目標設定の変更
復職直後の最大の目標は、「成果を出すこと」ではなく、「休まず出勤し続けること」と「休日に心身の疲れを回復させること」に切り替える意識が重要です。
3. ストレス対処法の定着
休職中に身につけた「ストレスへの対処法」や「セルフケアの習慣」を、
忙しい職場に戻っても継続できるかが、長期的な再発予防の鍵となります。
- ストレスの早期発見(再発のサインを自覚する)
- 定期的な気分転換や休息
- 職場の上司や産業医、主治医への相談体制の維持
これらの工夫とサポート体制を整えることで、「ただ復職する」から「再発せずに長く働き続ける」ための復職へと変わるのです。
焦らず、専門家の意見と会社の体制を活用し、万全の状態で復職の扉を開きましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
