抗菌薬の選択は、感染症治療において非常に重要です。
特に、キノロン系抗菌薬は幅広い感染症に対応できるため、多くの臨床現場で使用されています。
その中でも ラスビック錠75mg(ラスクフロキサシン)と グレースビット錠50mg(シタフロキサシン)は、
比較的新しいニューキノロン系抗菌薬として注目されています。
今回は、それぞれの特徴や使い分けについて、最新の情報をもとに詳しく解説します。
1. ラスビック錠の特徴
ラスビック錠は、ラスクフロキサシン(Lascufloxacin)を有効成分とするニューキノロン系抗菌薬です。
2019年に製造承認され、2020年に発売されました。
主な特徴
1. 適応症が限定的
ラスビック錠は、耳鼻咽喉科領域や 呼吸器感染症に特化した抗菌薬です。
具体的には、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎などに適応があります。
2. 低用量で組織移行性が良い
ラスビック錠は低用量でも、組織移行性に優れています。
特に肺胞上皮被覆液や肺胞マクロファージへの移行性が高く、呼吸器感染症に適しています。
3. 耐性化が起こりにくい
ラスビック錠は デュアルインヒビターとして、DNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣを同程度阻害するため、耐性菌の発生を抑制しやすいとされています。
4. 胆汁排泄型で腎機能への影響が少ない
腎機能による投与量調節が不要であり、腎機能障害のある患者にも比較的安全に使用できます。
2. グレースビット錠の特徴
グレースビット錠50mgは、シタフロキサシン(Sitafloxacin)を有効成分とするニューキノロン系抗菌薬で、2008年に国内で発売されました。
主な特徴
1. 幅広い適応症
グレースビット錠は、呼吸器感染症 や尿路感染症、歯周組織炎、腎盂腎炎、子宮頚管炎など、幅広い感染症に適応があります。
ラスビック錠よりも適応範囲が広く、特に尿路感染症にも使用できる点が特徴です。
2. 強力な抗菌スペクトル
シタフロキサシンは、グラム陽性菌・グラム陰性菌の両方に対して強い抗菌作用を持ち、特に耐性菌に対する効果が期待されています。
3. 腎排泄型で腎機能に注意が必要
グレースビット錠は腎排泄型であるため、腎機能が低下している患者では投与量の調整が必要です。
3. ラスビック錠とグレースビット錠の使い分け
① 呼吸器感染症の場合
ラスビック錠は肺組織への移行性が高く、呼吸器感染症に適しています。特に慢性呼吸器病変の二次感染や副鼻腔炎などに有効です。
グレースビット錠も呼吸器感染症に使用できますが、より広範な適応を持つため、他の感染症も併発している場合に選択されることが多いです。
② 尿路感染症の場合
ラスビック錠は尿路感染症には適応がありません。
グレースビット錠は尿路感染症に適応があり、腎排泄型であるため、尿中濃度が高くなりやすく効果的です。
③ 腎機能が低下している患者の場合
ラスビック錠は胆汁排泄型であり、腎機能による投与量調整が不要です。
グレースビット錠は腎排泄型であるため、腎機能が低下している患者では投与量の調整が必要です。
まとめ
ラスビック錠とグレースビット錠は、どちらもニューキノロン系抗菌薬ですが、適応症や排泄経路が異なるため、使い分けが重要です。
ラスビック錠は呼吸器感染症に特化し、腎機能への影響が少ない。
グレースビット錠は幅広い感染症に対応し、特に尿路感染症に有効。
患者さまの状態や感染症の種類に応じて、適切な抗菌薬を選択することが重要です。最新の情報をもとに、適切な治療を行いましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
参考文献
[ラスビック錠の特徴と位置付け](https://kusuripro.com/lasvic-lascufloxacin/)
[ラスビック錠の作用機序と副作用](https://yakuzaishi.love/entry/Lasvic-20191211)