マイコプラズマ菌の分類
マイコプラズマ菌(Mycoplasma)は、細菌の一属であり、体内で寄生することが多い微生物です。
現在、124種のマイコプラズマが登録されており、中でも最も知られているのが「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」です。
この菌は、主に呼吸器感染症を引き起こす原因となり、特に小児や若年層において肺炎の重要な原因となっています。
マイコプラズマの特徴
細胞壁を持たない
マイコプラズマ菌は細胞壁を持たないため、他の細菌とは異なる構造を持ちます。
G陽性・G陰性菌に分類されません。
このため、グラム染色法での識別が難しく、感染症の診断において特別な手法が必要です。
小さい細胞サイズ
マイコプラズマは非常に小さな細胞を持ち、直径は約200-300nmで、細胞サイズが最小の部類に入ります。
この特性は、喀痰培養などの培地(シャーレ上)でのコンタミネーション等、さまざまな影響を及ぼします。
マイコプラズマ菌の特徴
生物学的特性
マイコプラズマ菌は、自己増殖できる最小の微生物であり、
その大きさと特性により、従来の細菌とは異なる行動を示します。
感染症の引き起こし
肺炎マイコプラズマは特に呼吸器系に影響を与え、非定型肺炎(異型肺炎)の原因となります。
非定型肺炎(ひていけいはいえん)とは、B-ラクタム系抗生物質の効果がみられない肺炎のうち、結核などを除く一群のこと。
マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、クラミジア肺炎、ニューモシスティス肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)など
引用元∶時事通信 家庭の医学-非定型肺炎より(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 佐藤 匡)
感染すると、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを引き起こすことがあり、
感染力
特に学校や集団生活の場での小規模な流行が見られることがあり、
感染後の潜伏期間は約2-3週間と長いです。
このため、感染者が周囲に伝染させる可能性が高いです。
感染した場合、数週間の咳や発熱が見られ、治療には抗生物質が使用されますが、
ワクチンがない理由
現在、マイコプラズマに対するワクチンは存在しません。
この理由としては
多様性と変異
マイコプラズマには多くの種が存在し、それぞれに異なる抗原を持っています。
この多様性は、効果的なワクチンを開発する上での障害となります。
細胞壁の欠如
マイコプラズマ菌は細胞壁を持たないため、一般的な細菌ワクチンの作成が難しいです。
細胞壁をターゲットにしたワクチンは、細胞壁の欠如により効果を発揮しにくい。
免疫反応の複雑性
マイコプラズマによって引き起こされる病気は、しばしば免疫逃避の能力を持つため、
ワクチン開発が難しいとされています。
特に、感染後に貧弱な免疫応答が見られる場合が多く、持続的な免疫を獲得するための難しさがあります。
研究の制約
マイコプラズマに関する研究は限られており、新薬やワクチンの開発は一部の専門機関や研究室に依存しています。
必然的に、進展が遅れることになります。
まとめ
マイコプラズマ菌は、独特な生物学的特性と高い感染力を持つ微生物であり、
特に呼吸器系の感染症において重要な細菌として認知されています。
主な対策としては、早期の診断と適切な抗生物質治療が求められます。
最後に
抗菌薬は、ペニシリン系やセフェム系などのβ‐ ラクタム剤は細胞壁合成阻害剤のため効果がなく、
マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤が用いられます。
一般的には、マクロライド系が第一選択で、耐性菌、副作用、高齢、免疫力低下など問題があれば他剤へ変更されると思います。
マクロライドは、静菌的薬剤です。
菌が死滅するには患者さまの免疫力が必要です。この点で学校の集団感染など若者には向いていると思います。
ワクチンがないので、医療従事者も感染しないように、うがい、手洗い、手指衛生を確実に行いましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
参考資料
[マイコプラズマ肺炎とは] (https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html)
[マイコプラズマ肺炎] (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mycoplasma.html)
[マイコプラズマとは?風邪や一般的な肺炎との違いを解説] (https://fastdoctor.jp/columns/what-mycoplasma)
[マイコプラズマ(Mycoplasma pneumonia)の話題] (https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-infect/file/ictmon/ictmon185.pdf)
[ガイドライン | 日本マイコプラズマ学会 – PLAZA] (https://plaza.umin.ac.jp/mycoplasma/guidelines/)