▶歯周病予防は究極の認知症予防!「歯と脳」を結ぶ最新科学の真実

認知症
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歯周病予防は究極の認知症予防!「歯と脳」を結ぶ最新科学の真実

「歯周病」と聞くと、口の中だけの問題だと思っていませんか?

実は、近年の医学研究により、この口の中の慢性の炎症が、認知症

特にアルツハイマー型認知症(AD)のリスクを高める可能性が極めて高いことが、科学的に明らかにされつつあります。

結論から言えば、

歯周病を予防することは、認知症を予防する上で極めて重要な生活習慣の一つであり、

最新の研究は、この二つの病気が驚くほど密接に「歯脳相関」として結びついていることを示唆しています。

 

1. なぜ歯周病が認知症につながるのか?:3つの主要なメカニズム

歯周病と認知症が関連するメカニズムは複雑ですが、主に以下の3つのルートが考えられています。

 

① 慢性的な全身性炎症(サイトカインの関与)

歯周病は、歯茎(歯肉)の慢性の炎症です。

歯周病が進行すると、体内で炎症を引き起こすサイトカインなどの物質が大量に作られ、血液に乗って全身を巡ります。

この炎症性物質は、脳内の血管を傷つけたり、脳の免疫細胞であるミクログリアを過剰に活性化させたりすることで、

脳内に慢性的な炎症(脳内炎症)を引き起こします。

脳内炎症は、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβやタウたんぱく質の蓄積を促進し、神経細胞の死滅につながると考えられています。

 

② 悪玉菌の直接的な関与(P.g菌とアミロイドβ)

最も注目されているのが、特定の歯周病菌、特にポルフィロモナス・ジンジバリス菌(P. gingivalis菌、通称 P.g菌)の直接的な関与です。

毒素の脳内侵入

歯周病が進行すると、歯周ポケット(歯と歯茎の溝)からP.g菌やその毒素が血管内に侵入し、

血流に乗って脳に到達することが、アルツハイマー病患者の剖検脳から検出されています。

アミロイドβの生成促進

P.g菌が産生する毒素や酵素は、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの生成・蓄積を直接的に促すことが、

マウス実験やヒトの歯茎組織を用いた研究で判明しています。

2019年に発表された九州大学などの研究では、ヒトの歯周病の歯茎から、脳内老人斑の主成分であるアミロイドβが産生されていることが世界で初めて確認されました。

 脳へのアミロイドβ輸送促進

P.g菌は、アミロイドβを脳血管のバリア(血液脳関門)を通過させるための受容体を増加させ、

脳の外で作られたアミロイドβが脳内へ輸送されるのを助けることも示されています。

これらの最新研究は、P.g菌がアルツハイマー病の発症と進行に多方面から関与していることを強く示唆しており、

認知症の予防には、P.g菌の増殖を抑える歯周病対策が不可欠である」という認識が広まっています。

 

③ 噛む力の低下(脳への刺激不足)

歯周病によって歯が抜けたり、噛む力が低下したりすることも、認知症リスクを高めます。

脳への血流・刺激の減少

食べ物をしっかりと噛む(咀嚼する)という行為は、

脳の血流を増やし、認知機能に関わる部位(特に海馬など)に強い刺激を与えます。

歯を失い噛む力が低下すると、この脳へのポジティブな刺激が減少し、認知機能の維持に悪影響を及ぼすと考えられています。

食事の質と栄養

噛めないことで、食事の選択肢が狭まり、栄養バランスが偏る(特にタンパク質やビタミン不足など)ことも、認知症の発症リスクを高める可能性があります。

国立長寿医療研究センターの調査でも、残っている歯の数が少ない高齢者ほど、認知症のリスクが高い傾向が示されています。

 

2. 認知症予防のための歯周病対策:今日からできること

歯周病が認知症のハイリスク要因であることがわかった今、最も効果的な予防策はシンプルです。

それは、徹底した歯周病予防を日常生活に取り入れることです。

 

① 毎日の徹底した口腔ケア

歯周病は、歯周ポケットに潜む細菌の塊(プラーク)が原因です。

歯磨きの徹底

毎食後、特に就寝前の歯磨きを丁寧に行うことが必須です。

寝ている間は唾液の分泌量が減り、細菌が最も増殖するためです。

補助器具の使用

歯ブラシだけでは、歯と歯の間や歯周ポケットの細菌を完全に取り除くことはできません。

歯間ブラシデンタルフロスを必ず併用し、歯ブラシの届かないところのプラークを取り除きましょう。

舌ケア

舌の上の白い苔(舌苔)も細菌の温床となるため、舌ブラシなどで優しく清掃します。

 

② 定期的な歯科検診と専門的なクリーニング

セルフケアだけでは限界があります。

プロによる除去

3~6ヶ月に一度、歯科医院で定期検診と専門的なクリーニング(PMTC)を受け、歯石や深部の歯周ポケットに潜むプラークを徹底的に除去してもらいましょう。

これにより、認知症との関連が深いP.g菌などの細菌数をコントロールすることができます。

 

③ 咀嚼機能の維持と回復

噛める状態の維持

歯を失ってしまった場合は、義歯(入れ歯)インプラントなどで、しっかり噛める状態を回復させることが、認知機能を維持する上で非常に重要です。

口腔機能訓練

ガムを噛む、よく話す、笑うなど、口の周りの筋肉を使う習慣も大切です。

 

3. 「歯脳相関」の負のスパイラルに注意

最後に知っておいていただきたいのは、この関係は双方向であるということです。

  • 歯周病が悪化 → 認知機能の低下
  • 認知機能が低下 → 歯磨きが困難になる → 歯周病の悪化

認知症が進行すると、自分で歯磨きを適切に行ったり、歯科医院を予約したりすることが難しくなり、口腔ケアがおろそかになりがちです。

これにより、歯周病がさらに悪化し、認知機能の低下を加速させるという「負のスパイラル」に陥る可能性があります。

そのため、ご家族や介護者は、認知機能が低下している方に対し、適切な口腔ケアのサポートを行うことが極めて重要となります。

口腔ケアは、単なる口の衛生習慣ではなく、全身の健康、そして脳の健康を守るための最前線なのです。

今日から、デンタルフロスを握って、未来の認知症リスクを遠ざけましょう!

以上、ご参考になれば幸いです。

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