こんにちは。
今日は、双極性障害(躁うつ病)の治療において、長年「ゴールドスタンダード(標準治療薬)」
として君臨し続けているリーマス錠(一般名:炭酸リチウム)について解説します。
2025年現在、新しい気分安定薬や抗精神病薬が次々と登場していますが、それでもなおリーマスが主役であり続けるのには理由があります。
その特徴から、最新のエビデンス、そして絶対に避けては通れない「血中濃度」の管理まで詳しくお届けします。
1. リーマス錠の唯一無二な特徴:なぜ「最強」と言われるのか?
リーマスは1949年にその効果が発見されて以来、半世紀以上にわたって使われている歴史ある薬です。
リチウムという「元素」そのものを薬にした非常にシンプルなものですが、その効果は多岐にわたります。
他の薬にはない「再発予防」と「自殺予防」
リーマスの最大の特徴は、躁状態とうつ状態の「波」を抑える再発予防効果が非常に高いことです。
さらに、
数少ない薬剤の一つです。
脳を守る「神経保護作用」
最新の研究では、リチウムには
も示唆されています。
単に気分を抑えるだけでなく、脳そのものを安定させる土台のような役割を果たしてくれます。
2. 賢い使いかた:用法と用量のステップ
リーマスは、いきなりドカンと飲む薬ではありません。
というプロセスが必要です。
導入期のステップ
通常、大人は1日400〜600mgを2〜3回に分けて服用し始めます。
そこから3日から1週間ごとに、1日1200mgを上限に、少しずつ量を増やしていきます。
維持期のステップ
症状が落ち着いてきたら、再発を防ぐための「維持量」へと移行します。
一般的には1日200〜800mg程度を継続しますが、これは人によって大きく異なります。
最新のトレンド
最近では、副作用を抑えるために「必要最小限の量」でコントロールする手法も重視されていますが、
勝手に減らすと再発のリスクが跳ね上がるため、必ず医師の指示に従うのが鉄則です。
3. リーマスの心臓部「血中濃度」の徹底管理
リーマスを使う上で、避けて通れないのが血液検査です。
なぜなら、この薬は「効く量」と「毒になる量」の幅が非常に狭い、とてもデリケートな薬だからです。
目指すべき数値(治療域)
有効な範囲:0.4 〜 1.0 mEq/L
激しい躁状態の時は 0.8 〜 1.2 mEq/Lと高めに設定することもあります。
落ち着いている時期(維持期)は 0.4 〜 0.8 mEq/L程度でキープするのが理想的です。
要注意の数値:1.5 mEq/L以上
この数値を超えると「リチウム中毒」のリスクが急激に高まります。
採血のタイミングが命!
血中濃度を正確に測るには、
これを「トラフ値」と呼びます。
夜に薬を飲んでいるなら、翌朝の受診時に薬を飲む前に採血するのがベストなタイミングです。
モニタリングの頻度(2025年最新推奨)
PMDA(医薬品医療機器総合機構)からも定期的な測定が強く推奨されています。
- 飲み始めや増量時:1週間に1回程度。
- 安定している時:2〜3ヶ月に1回程度。
4. 最新のエビデンスと安全性の話
2024年から2025年にかけての最新知見でも、リーマスの重要性は揺らいでいません。
双極性障害の「第一選択薬」
日本や世界の治療ガイドラインでは、今でもリーマスが双極性障害の第一選択薬として推奨されています。
リチウム中毒を防ぐための「3つの天敵」
血中濃度を勝手に上げてしまう「天敵」が3つあります。
脱水
激しい運動、サウナ、発熱、下痢などで水分が減ると、血中濃度が急上昇します。
減塩
体内の塩分が減ると、腎臓が代わりにリチウムを溜め込んでしまいます。
痛み止め(NSAIDs)
市販のロキソニンやイブなどの痛み止めは、リチウムの排泄を邪魔して濃度を上げてしまうことがあります。
中毒のサインを見逃さない
中毒の初期サインかもしれません。
すぐに服用を中止し、医療機関に連絡してください。
5. まとめ:長く付き合うためのパートナー
リーマス錠は、正しく使えば人生を安定させてくれる「最高のパートナー」になります。
定期的な採血は少し面倒に感じるかもしれませんが、それはあなたの安全を守るための大切なステップです。
水分をしっかり摂り、定期検査を受けながら、自分にぴったりの「リチウム量」を見つけていきましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
