▶【ロナセン錠®】の特徴、用法用量、テープへ切り替え時の注意点などを教えて!

薬剤師の皆様へ
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【ロナセン錠®】の特徴、用法用量、テープへ切り替え時の注意点などを教えて!

こんにちは!

今日は、日本で開発され、その「キレの良さ」と「使い勝手の進化」で注目を集め続けている

ロナセン錠(一般名:ブロナンセリン)について解説します。

2025年現在、約100人に1人罹患するとされる統合失調症の治療は、

再発を防ぎながら、いかに自分らしい生活を送るか」というステージにあります。

その中でロナセンは、錠剤から世界初のテープ剤(貼り薬)まで選択肢が広がり、より柔軟な治療が可能になりました。

今回は、ロナセン錠の基本から、最新のテープ剤への切り替えルールまで、詳しく紐解いていきます。

 

1. ロナセン錠の唯一無二な特徴:シャープな「D2遮断」

ロナセンは、第2世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)の中でも、

特にドパミンへの作用が強力な「DSA(ドパミン・セロトニン・アンタゴニスト)」というグループに属します。

 

ドパミンを「ピンポイント」で抑え込む

ロナセンの最大の特徴は、ドパミンD2受容体に対して非常に高い親和性(結びつく力)を持っていることです。

幻覚や妄想の原因となる過剰なドパミンをしっかりブロックするため、

ポジティブな症状(陽性症状)に対する「キレ」が非常に良いと評価されています。

 

余計なところを刺激しない「スマートさ」

他の多くの薬が、ついでにヒスタミン受容体(眠気や体重増加の原因)アドレナリン受容体(立ちくらみの原因)も刺激してしまうのに対し、

ロナセンはこれらへの影響が極めて少ない設計になっています。

太りにくい

代謝への影響が少ないため、体型を気にされる方に適しています。

眠くなりにくい

日中の活動性を維持しやすく、仕事や学校との両立を目指す方の強い味方です。

 

2. 正しい用法・用量:食事なしでは語れない理由

ロナセン錠を飲む際に、絶対に守らなければならない黄金律があります。

それは「必ず食後に飲む」ということです。

 

「空腹時」は厳禁! 吸収率の驚くべき違い

ロナセンは脂に溶けやすい性質を持っており、食事と一緒に摂ることで初めて効率よく体内に吸収されます。

最新のデータでも、

空腹時に服用すると、食後に比べて血中濃度が大幅に(約3分の1程度まで)低下してしまう

ことが分かっています。

せっかく薬を飲んでも、空腹時では効果が十分に発揮されず、症状の再燃を招くリスクがあるのです。

 

基本の服用スケジュール

成人(18歳以上)

1回4mgを1日2回(食後)からスタート。

徐々に増やし、1日8〜16mgを維持量とします。最大で1日24mgまで増量可能です。

小児(7歳以上)

2021年の適応拡大以降、お子様への使用も一般的になりました。

1回2mgを1日2回から始め、最大16mgまでの範囲で調整します。

 

3. 副作用との付き合い方:早期発見が大切

メリットが多いロナセンですが、ドパミンを強力に抑えるがゆえの「苦手分野」もあります。

 

錐体外路症状(EPS)

ドパミンを抑えすぎることで、運動機能に影響が出ることがあります。

アカシジア(静坐不能)

足がむずむずする」「じっとしていられない」「そわそわして歩き回りたくなる」といった感覚です。

これが最も多く見られる副作用の一つです。

パーキンソン症候群

手の震え、体のこわばり、動作がゆっくりになる、といった症状です。

 

対策のポイント

もし「そわそわ感」や「震え」を感じたら、すぐに主治医に相談してください。

お薬の量を少し減らす、あるいは副作用を和らげる「抗コリン薬」などを併用することで、驚くほど楽になるケースがほとんどです。

 

血糖値とプロラクチン

稀に血糖値の上昇や、プロラクチン(ホルモン)の上昇による生理不順などが起こる場合があります。

定期的な血液検査でこれらをチェックしていくのが、2025年現在の標準的なケアです。

 

4. 錠剤から「ロナセンテープ」への切り替え:最新の換算ルール

近年、飲み忘れの防止や、血中濃度を一定に保つために、

世界初の経皮吸収型(貼り薬)である「ロナセンテープ」に切り替える患者さんが増えています。

ここで重要になるのが、錠剤とテープの「用量換算」です。

 

用量の目安(換算の基本)

錠剤からテープへ切り替える際の一般的な目安は以下の通りです。

  • ロナセン錠 8mg/日 ≒ ロナセンテープ 40mg
  • ロナセン錠 12mg/日 ≒ ロナセンテープ 60mg
  • ロナセン錠 16mg/日 ≒ ロナセンテープ 80mg

注意: テープ剤の最大用量は「80mg」です。

錠剤の最大量(24mg)を飲んでいる方が切り替える場合は、テープの最大量である80mgで対応することになります。

 

切り替え時の「重なり」に注意

錠剤からテープに切り替える日は、「前日の夜まで錠剤を飲み、翌朝からテープを貼る」のが一般的です。

テープを貼ってから血中濃度が安定するまでには少し時間がかかるため、

医師の判断によっては数日間だけ錠剤を併用しながら移行することもあります。

自己判断での調整は、血中濃度が急激に変わって症状が悪化する原因になるため、必ず医師のスケジュール通りに行ってください。

 

5. まとめ:活動的な明日へつなげるために

ロナセン錠は、「余計な副作用を抑えつつ、中心となる症状をシャープに叩く」という、

非常に現代的なコンセプトのお薬です。

  • 食後に飲む(吸収を最大化する)
  • そわそわ感が出たら相談する(副作用対策)
  • テープ剤という選択肢も視野に入れる(利便性の向上)

この3点を意識することで、病気と上手く付き合いながら、自分らしい活動的な毎日を取り戻すことができます。

2025年現在、治療のゴールは「症状ゼロ」だけでなく、その先の「自分らしい生活(リカバリー)」にあります。

ロナセンはそのための強力なツールとなってくれるはずです。

以上、ご参考になれば幸いです。

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