▶【大腸がん】手術で「治る」可能性はどれ位? 最新情報から読み解く予後と未来

抗腫瘍薬、治療法
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【大腸がん】手術で「治る」可能性はどれ位? 最新情報から読み解く予後と未来

前回の大腸がんの時は、「大腸内視鏡検査」の重要性をお話ししましたね。

でも大腸がんという言葉を聞くと、やはり不安を感じる方が多いかと思います。

特に「手術で完全に治るのだろうか?」という疑問は、ご本人やご家族にとって最も知りたいことでしょう。

結論から申し上げると、大腸がんは、早期に発見し、適切な治療、特に手術を行うことで、

非常に高い確率で治癒が期待できるがんです。

もちろん、進行度によってその可能性は大きく変わってきますが、最新の医療の進歩により、

たとえ進行していても、以前では考えられなかった予後(病気の経過・見通し)の改善が見られています。

この記事では、大腸がんが手術で治る可能性について、最新のデータや治療の現状を踏まえ、具体的に、そして分かりやすくお伝えしていきます。

 

「治る」の指標:「5年生存率」と「根治切除」

まず、「治る」という言葉を医学的にどう捉えるかを知っておく必要があります。

がんは再発のリスクがゼロではないため、多くの場合、治療後5年間再発がなければ「治癒」に近い状態と見なされます。

この指標として重要なのが「5年生存率」です。

また、手術においてがん病変を完全に切除できた状態を「根治切除」と言い、これが治癒への第一歩となります。

大腸がんの治療は、この根治切除を目指すことが基本中の基本です。

 

ステージ別の5年生存率:早期発見の重要性

大腸がんの「治る」可能性は、がんの進行度を示す「ステージ(病期)」に最も強く影響されます。

  • がんがどの程度大腸の壁に深く入り込んでいるか(深達度)、
  • リンパ節に転移しているか、
  • 他の臓器に遠隔転移しているか

によってステージは0期からIV期に分類されます。

最新のデータ(国立がん研究センターなどの情報に基づく)を見ると、早期に発見されればされるほど、

5年生存率は非常に高いことが分かります。

 

ステージ0期・I期(早期がん)

がんが粘膜内、または大腸の壁の浅い層にとどまっている状態です。

この段階での5年相対生存率は、90%以上ステージI期でも9割前後と極めて高くなっています。

特に0期のように非常に浅いがんは、開腹手術ではなく、内視鏡を使った切除内視鏡的粘膜切除術など)で治癒が期待でき、再発の可能性はほとんどありません。

I期でも、外科手術(腹腔鏡手術などを含む)でがんを取りきることができれば、ほぼ治癒が見込めます。再発率は約5%程度とされています。

 

ステージII期(進行がんの一部)

がんが大腸の壁を貫いて広がっているが、リンパ節転移がない状態です。

5年生存率は80%台前半から後半と、まだ非常に高い水準にあります。

リンパ節への転移がないことが、予後の良さの鍵となります。

しかし、再発率は約15%程度に上昇するため、手術後の再発リスクを評価し、

再発予防のための補助化学療法(抗がん剤治療)が検討されることがあります。

 

ステージIII期(リンパ節転移あり)

リンパ節に転移がある状態です。

5年生存率は60%台から70%台となります。

II期と比べると生存率は下がりますが、それでも多くの方が5年以上の生存を達成しています。

このステージでは、目に見えない微小ながん細胞が体内に残っている可能性があるため、

手術で原発巣とリンパ節を完全に切除した後、補助化学療法を行うことが標準治療として強く推奨されます。

この補助化学療法によって、再発率を抑え、治癒の可能性を高めることができるのです。

III期の再発率は約30%程度とされますが、この化学療法がこのリスク低減に貢献します。

 

ステージIV期(遠隔転移あり)

肝臓や肺など、他の臓器に転移(遠隔転移)がある状態です。

この段階での5年生存率は15%~20%台と、大きく下がります。

一見、「治る」ことは難しいように思えますが、最新の治療では、ここにも希望の光があります。

 

ステージIV期でも治癒を目指せる「集学的治療」

かつてはステージIV期と診断されると「治癒は困難」とされていましたが、

現代の医療では、「切除可能」な転移であれば、手術による根治を目指します。

これが「集学的治療」の最も重要なポイントの一つです。

 

1. 転移巣の手術による切除

大腸がんの転移先として最も多いのは肝臓です。

肝転移・肺転移

転移している病巣の数や場所、大きさなど、条件が整えば、原発巣(大腸のがん)だけでなく、転移巣も切除します。

この手術で完全に切除できた場合、切除後の5年生存率は、30%~50%という、

ステージIV期としては非常に高い数値が報告されており、根治が十分に期待できるのです。

以前は「多発転移は手術適応外」とされることもありましたが、

現在では外科手術の技術と周術期(手術前後)の管理の進歩により、切除できる範囲が広がっています。

 

2. 術前・術後化学療法の進化

切除が難しいと判断された場合でも、すぐに諦めるわけではありません。

コンバージョン治療

強力な抗がん剤治療や分子標的薬を組み合わせた最新の薬物療法を行うことで、

がんを小さくし、切除可能な状態に「変換(コンバージョン)」させる治療戦略が確立されています。

このコンバージョン治療の成功により、最終的に手術でがんを完全に切除し、長期生存や治癒に至るケースが増えてきています。

 

手術を取り巻く最新の進歩

手術そのものの技術も進化し、「治る」可能性をさらに高めています。

 

腹腔鏡手術とロボット支援手術

腹腔鏡手術

小さな傷で手術を行うため、患者さんの体への負担(侵襲)が少なく、術後の回復が早いのが大きなメリットです。

現在、多くの場合、大腸がんの標準的な術式となっています。

 

ロボット支援手術(ダヴィンチなど)

特に複雑で深い骨盤内にある直腸がんの手術において、ロボットが持つ精密な動きや高精細な3D画像により、より正確で繊細な手術が可能になりました。

これにより、直腸がん手術後の排便機能や性機能を温存できる可能性が高まり、

「治る」だけでなく、術後のQOL(生活の質)の維持にも大きく貢献しています。

 

予防のための術後フォローアップ

手術で「治癒」を目指した後も、再発を早期に発見するためのサーベイランス(定期的な検査・経過観察)が非常に重要です。

大腸がんの再発は、約80%が術後3年以内、95%が術後5年以内に見つかっています。

そのため、術後5年間は、血液検査(腫瘍マーカーなど)やCT検査、内視鏡検査を定期的に行い、

もし再発したとしても、初期の段階で発見し、再び切除手術や薬物療法を行うことで、再度の根治を目指すことができるのです。

再発巣の切除による5年生存率も、約40%程度と決して低くはありません。

 

まとめ:希望を持って治療に臨むために

大腸がんは、早期発見ができれば、手術による「治癒」が非常に高い確率で期待できるがんです。

たとえ進行したステージIII期やIV期であっても、手術、化学療法、分子標的薬、放射線治療などを組み合わせた「集学的治療」によって、治癒の可能性は格段に向上しています。

特に、

転移巣の切除が可能であれば、ステージIV期であっても根治を目指せる時代になりました。

大切なのは、正確な情報を理解し、主治医とよく相談しながら、ご自身に最も適した最新の治療法を選択することです。

大腸がんの治療は日々進歩しており、希望を持って前向きに治療に臨むことが、治癒への一番の力となります。

もし現在、治療に不安を感じていらっしゃるなら、どうか希望を失わないでください。

あなたの主治医や医療チームが、最善を尽くしてあなたをサポートしてくれるはずです。

以上、ご参考になれば幸いです。

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