【薬剤師に知ってほしい糖尿病ー7】▶「糖尿病の合併症を詳しく学ぼう」

糖尿病
   糖尿病の合併症を詳しく学ぼう
以下の文章は、糖尿病治療ガイド2022-2023、糖尿病標準診療マニュアル2023を参考にしています。

糖尿病の合併症は、薬剤師の皆様よくご存知と思います。

今日は、患者さまに分かりやすく説明するためのアイコン画像を用意しました。

▼覚え方は、「しめじにえのき」です。学生に教えたことがありますが、とても興味があるようでした。

左から順番にお話します。(最小血管障害

「神経障害」

糖尿病性神経障害には、多発神経障害(広汎性左右対称性神経障害)と単神経障害があります。

頻度が多いのは多発神経障害です。

多発神経障害は、高血糖の持続により進展し、

両足の感覚・運動神経障害と自律神経障害の症状があらわれます。

厳格な血糖コントロールにより発症・進行を抑制できます。

進行すると足潰瘍足壊疽の原因になりますね。

治療は、まず血糖コントロールです。

薬では、エパルレスタットプレガバリンミロガバリンデュロキセチンなどが使用されます。

消化管運動神経機能低下による嘔気、便秘、下痢、血糖不安定ならば、モサプリドなどを用います。

膀胱機能低下による残尿や無力性膀胱は、尿路感染症の原因になります。

単神経障害は、外眼筋麻痺と顔面神経麻痺が多く、血糖コントロールとは相関しません。


糖尿病性網膜症

網膜の血管壁細胞の変性、基底膜の肥厚による血流障害などで、

出血・白斑・網膜浮腫などがおこります。

進行すると黄斑症、網膜や硝子体内に新生血管ができて、

硝子体出血網膜剥離を起こし視力障害になります。

血管新生緑内障は高率で失明につながる末期合併症です。


糖尿病性腎症

腎糸球体血管に網膜症と類似の血管変化が起こります。

血管周囲の結合組織であるメサンギウムが増え、

糸球体の破壊、機能障害がおこります。

腎機能障害レベルは第1〜5期に分類されています。▼

糖尿病性腎症病期分類

第1期(腎症前期)正常アルブミン尿(30未満)eGFR 30以上
第2期(早期腎症期)微量アルブミン尿(30〜299)eGFR 30以上
第3期(顕性腎症期)顕性アルブミン尿(300以上)あるいは(持続性タンパク尿0.5以上) eGFR 30以上
第4期(腎不全期)問わない  eGFR 30未満
第5期(透析療法期)透析療法中

腎症進展の予防は、肥満改善、禁酒、厳格な血糖、血圧、脂質管理が最も重要です。

薬では、近年SGLT2阻害薬が腎症進展のリスクを下げます。

GLP-1受容体作動薬が顕性アルブミン尿を抑制することがわかりました。

高血圧を管理する(目標130/80)ことで、腎症の進行を遅らせます。

薬は、ACE阻害薬ARB、さらにフィネレノンが追加されることがあります。

詳細は、「糖尿病治療ガイド」に詳しく書かれています。参考にしてください。


認知症

別のカテゴリーでご紹介しているので、ここでは割愛します。


大血管障害について)

壊疽

糖尿病性足病変による潰瘍から壊疽までの幅広い病態です。

糖尿病性多発神経障害微小循環障害PAD(末梢動脈疾患)外傷、感染症などが複雑に関連しています。

高血糖は創部治癒を遅らせますね。

毎日素足をよく観察することが大切です。


脳梗塞などの脳血管障害」

脳出血よりも脳梗塞が多い。

脳梗塞の頻度は、非糖尿病の方の2〜4倍高いです。

全体として小さな梗塞が多発する傾向があります。

脳血管障害の予防は、腎症予防と同じで血糖と高血圧を管理します。(目標130/80


狭心症、心筋梗塞

狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患は、欧米では糖尿病の方の40〜50%で心筋梗塞が直接死因となっています。

糖尿病の方の急性心筋梗塞は、はっきりした症状がないことが多い。(無症候性∶非定型的)

腹部肥満、耐糖能異常、高血圧や脂質異常症のうち複数合併するメタボリックシンドローム、あるいは喫煙者ではリスクが上がります。

上記の予防と、二次的に抗血小板剤が有効です。

メトホルミンSGLT2阻害薬や、GLP-1受容体作動薬の一部が、冠動脈疾患防止に有効と報告されています。


以上ですが、予防が最も大切です。

HbA1cの値を聞いてもごまかす場合、

合併症の怖さ、辛さ、さらに医療費の増加など分からない、分かろうとしない患者さまが多い印象です。

もちろん寿命にも影響があります。また別の機会にご紹介します。

勉強の参考にしてください。

以上、ご参考になれば幸いです。

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