αβ遮断薬と心不全について詳しく学ぼう
以下の文章は、公益財団法人 日本心臓財団 循環器最新情報、バイエルファーマナビサイト、DIクイズ:(A)妊娠高血圧症候群に使用できる降圧薬(日経DI2015年1月号)などを参考にしています。
αβ遮断薬は、β遮断薬とα遮断薬の両方の作用を持つ薬です。
β遮断薬
心臓の働きを抑えて血圧を下げる効果があります。
副作用として気管支や血管を収縮させることがあります。
α遮断薬
血管を拡張して血圧を下げる効果があります。
副作用として起立性低血圧や鼻づまりなどが起こることがあります。
αβ遮断薬
αとβ遮断作用と副作用をバランスよく調整することで、高血圧や狭心症などの治療に用いられます。
また心臓の仕事量を減らし、血管を拡張させることで、心不全の治療にも有効です。
心不全とは
心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液が送られない状態です。
心不全になると、息切れやむくみ、疲労感などの症状が出ます。
心不全症候群になるまでの経過について
心不全の原因には、高血圧や狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症などがあります。
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これらの病気によって、心臓の筋肉が傷ついたり、硬くなったり、拡大したりします。
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その結果、心臓の収縮力や弛緩力が低下し、心不全が起こります。
心不全の治療には、ACE阻害薬やARB、アルドステロン受容体拮抗薬などの血管拡張薬や利尿薬などが用いられます。
上記の薬は、血圧を下げたり、水分を排出したりすることで、心臓にかかる負担を減らします。
上記の薬だけでは、心不全の進行を完全に止めることはできない
心不全になると、体は血液の不足を補おうとして、交感神経やレニンアンギオテンシン系などのホルモン系を活性化させます。
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これらのホルモン系は、心臓の収縮力を高めたり、血管を収縮させたりすることで、一時的に血圧や血流を維持しようとします。
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このホルモン系の活性化は、長期的には心臓にとって有害です。
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心臓の収縮力が高まると、心臓の酸素消費量が増えて、虚血を招きます。
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血管の収縮は、末梢血管の抵抗を高めて、心臓にかかる負担を増やします。
心筋組織の炎症や線維化による心臓機能低下
レニンアンギオテンシン系などのホルモン系の活性化は、心臓の筋肉や組織の炎症や線維化を促進し、心臓の機能をさらに低下させます。
心不全の治療には、レニンアンギオテンシン系などのホルモン系の活性化を抑える薬が必要
その役割を果たすのが、αβ遮断薬です。
αβ遮断薬は、交感神経の受容体であるα受容体とβ受容体を遮断することで、心臓の収縮力や心拍数を抑えたり、血管を拡張したりします。
心臓の酸素消費量を減らし、血圧や血流を改善します。
さらに、αβ遮断薬は、心臓のリモデリングと呼ばれる、心臓の形や大きさの変化を抑制したり、改善したりすることができます。
リモデリングは、心臓の機能低下の原因や結果となる現象で、心臓の筋肉が拡大したり、壁が肥厚したり、ねじれたりします。
αβ遮断薬の効果は、すぐには現れません。最初は、悪化することがあります。
最初は、心臓の収縮力を低下させることで、心不全の症状を悪化させることもあります。少量から開始、徐々に増量します。
数週間から数ヶ月かけて、徐々に心臓の機能が改善され、症状が軽減されます。
そのため、αβ遮断薬は、少量から始めて、徐々に増量していく必要があります。
αβ遮断薬には、主に以下の4種類があります。
①アーチスト(一般名:カルベジロール):
β1選択性とα1遮断作用を持ち、高血圧や狭心症、不整脈、慢性心不全などに用いられます。
心筋の保護作用や動脈硬化の予防作用もあるとされます。
②アロチノロール(一般名:アロチノロール):
非選択性のβ遮断作用とα1遮断作用を持ち、高血圧や狭心症、不整脈などに用いられます。
本態性振戦の治療にも使われることがあります。
③カルバン(一般名:ベバントロール):
非選択性のβ遮断作用とα1遮断作用を持ち、高血圧に用いられます。
カルシウム拮抗作用もあるとされ、血管収縮を抑える効果があります。
④トランデート(一般名:ラベタロール):
非選択性のβ遮断作用とα1遮断作用を持ち、高血圧や狭心症に用いられます。
まれに妊娠高血圧症候群の治療にも使われることがあります。
以上です。今回も難関ですね。
ご参考になれば幸いです。