心不全における薬物療法の目的は、心臓の負担を減らし、心筋のリモデリングを抑制し、心不全の症状や予後を改善することです。
心不全の薬物療法には、いくつかの種類がありますが、その中でもレニン・アンジオテンシン系に作用する薬剤は重要な役割を果たしています。
レニン・アンジオテンシン系とは、血圧や血液量を調節するホルモンの一つで、
心不全では過剰に活性化されて、心臓や血管に悪影響を及ぼします。
レニン・アンジオテンシン系に作用する薬剤には、ACE阻害薬、ARB、ARNIの3種類があります。
ACE阻害薬
アンジオテンシンIIという血管を収縮させるホルモンの生成を抑えることで、血圧を下げたり、心臓の保護効果を発揮します。
ARB(アンジオテンシンIIの受容体拮抗薬)
アンジオテンシンIIの受容体を直接ブロックすることで、アンジオテンシンIIの作用を阻害します。
ARBは、ACE阻害薬と同様に、血圧を下げたり心臓を保護します。
ARBは、ACE阻害薬の副作用(主に咳)がある場合や、ACE阻害薬の効果が不十分な場合に選択されます。
ARBの代表的な薬剤にカンデサルタンやバルサルタンなどがあります。
▼ARBの一覧▼

また配合剤が多くあります。
▼ARB配合剤の一覧▼

ARNIは、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の略称で、高血圧や心不全の治療に用いられる薬です。
ARNIは、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とネプリライシン阻害薬の合剤です。
アンジオテンシンIIという血圧を上げるホルモンの作用を阻害するとともに
ナトリウム利尿ペプチドという心臓を保護するホルモンの分解を抑えます。
ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心臓の負荷が増えたり心筋が肥大したりすると心臓から分泌されます。
利尿作用や血管拡張作用があり、心臓を保護するように働くホルモンです。BNP検査が異常値なら心不全を強く疑います。
これにより、血圧を下げたり、心臓の負担を軽減したり、心不全の症状や予後を改善したりする効果が期待できます。
ARNIは現在、エンレスト®(一般名∶サクビトリル/バルサルタン)のみです。
慢性心不全の基本治療薬として、ACE阻害薬やARBでは効果不十分な患者に推奨されています。
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する
忍容性が認められる場合は、2〜4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する
1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する
なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする

心不全の治療には、薬剤の種類や用量を個々の患者に合わせて調整する必要があります。
高血圧と心不全で用法が異なる場合は、注意が必要です。
ARB、ARNIが処方されているときは、病状を考える習慣を身につけましょう。
