結論から申し上げますと、
たとえ「高いジェネリックから安い先発に戻すだけだから、患者さんにも医師にも損はないだろう」と考えたとしても、
ルール上、薬剤師の独断で変えることはできません。
- イソバイドシロップ70%分包30mL(先発): 74.20円
- イソソルビド内用液70%分包30mL「CEO」(後発): 99.70円
- イソソルビド内用液(CEO)の方が1包あたり25.5円高いです。
この一見「逆転現象」のようなケースについて、2024年以降の最新ルールや現場での注意点、
そしてイソバイド特有の事情を含めて、詳しく解説していきます。
意外と迷う「ジェネリックから先発品」への変更
通常、薬局での変更調剤といえば「先発品からジェネリックへ」という流れが一般的ですよね。
しかし、最近は供給不安や味の好み、あるいは医師の強いこだわりによって、
あらかじめ「ジェネリックの銘柄」が指定され、さらに「変更不可」にチェックが入るケースが増えています。
ここで問題になるのが、「指定されたジェネリックの在庫が切れているけれど、先発品ならある」という状況です。
「先発品なら文句ないでしょ?」とつい思いがちですが、実はここには法的なルールと、イソバイドならではの深い理由が隠されています。
なぜ勝手に先発品に戻してはいけないのか?
処方箋に「変更不可」のチェックと医師の署名がある場合、それは薬剤師に対する「法的な絶対指示」となります。
この指示を無視して調剤することは、以下の理由から認められません。
1. 「上(先発)」への変更も「処方変更」にあたる
たとえ先発品の方が品質が安定している(とされる)場合でも、
安価なジェネリックから高価な先発品へ変えることは、患者さんの自己負担額を増やす行為です。
「安くなるならいいけど、高くなるのは困る」という患者さんも多いため、経済的な観点からも勝手な変更は許されません。
2. 医師の「医療上の必要性」を尊重する
2024年(令和6年)の診療報酬改定により、処方箋の様式が変わりました。現在、変更不可欄には「(医療上必要)」という文言が明記されています。
つまり、医師がそこにチェックを入れたということは、
と宣言していることになります。
3. 在庫不足は「変更不可」を解除する理由にならない
「在庫がない」というのは薬局側の都合であり、医師の指示を無効化する理由にはなりません。
在庫がない場合は、必ず「在庫がないため、別銘柄(または先発品)に変えても良いか」を確認し、
医師の了承(疑義照会)を得るプロセスが必須です。
イソバイド「SEO」を指定する医師のこだわり
特にイソバイド(成分名:イソソルビド)において、なぜ医師がわざわざジェネリックを指定し、変更不可にするのでしょうか。
そこにはこの薬特有の「飲みにくさ」が関係しています。
味の改良(フレーバーの差)
先発のイソバイドシロップは、衝撃を受けるほど苦くて酸っぱいことで有名です。
一方、ジェネリックの「SEO(ゼリア新薬)」などは、メーカー独自の工夫で飲みやすくフレーバーが調整されています。
医師はコンプライアンス(服用継続)を守るために、あえてSEOを指定することがあります。
剤形の工夫
イソソルビド製剤にはシロップだけでなくゼリー剤(メニレットなど)もあります。
医師が特定の製品を選んでいる背景には、その患者さんが「一番飲み続けられるもの」を選んだという背景があるのです。
2024年10月からの「選定療養」の影響は?
最近話題の「先発品を選ぶと追加料金がかかる制度(選定療養)」についても触れておきます。
今回のケースのように、
これは「医療機関や薬局の都合」によるものだからです。
ただし、これを適用するためには
この手続きを正しく踏むためにも、やはり疑義照会は欠かせません。
現場でスムーズに対応するための言い回し
医師に電話をする際、「在庫がないので先発品にしますね」とだけ伝えると、
こだわりがある先生には角が立つかもしれません。以下のような伝え方を意識するとスムーズです。
このように、「供給不足という社会情勢」と「患者さんの治療優先」という2点を伝えると、多くの医師は快く許可してくれます。
まとめ
イソバイドシロップ「SEO」の変更不可チェックがある場合、先発品への変更であっても疑義紹介は必須です。
- 「変更不可+署名」は絶対的な指示
- イソバイドは「味」のこだわりで指定されていることが多い
- 在庫不足による変更は選定療養の対象外(患者負担は増えない)だが、手続きとして医師の確認が必要
薬不足が続く苦しい状況ですが、ルールを守りつつ、患者さんがしっかりとお薬を服用できるようサポートしていきましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
