チェロを愛する皆さま、こんにちは。
練習中に特定の音(例えばFやF#)で、楽器が「ブオーッ」と震えて音がひっくり返るような現象に悩まされたことはありませんか?
それは、チェロ弾きの宿命とも言える「ウルフトーン」です。
今回は、そんなウルフをなだめるための必須アイテム「ウルフキラー(ウルフ・エリミネーター)」について、
その原理から、最新の調整方法、そして「どこに付けるのが正解?」という疑問まで詳しく解説していきます。
1. そもそも「ウルフ」はなぜ現れるのか?
ウルフキラーの付け方を語る前に、まずは敵(ウルフ)の正体を知っておきましょう。
チェロは木製の箱です。この箱には「固有振動数」という、その楽器が最も震えやすい特定のリズムがあります。
一方で、私たちが弦を弾くと、弦も一定のリズムで振動します。
共振の暴走
弦と本体が激しく共振しすぎると、エネルギーの食い合いが起こります。
音の打ち消し合い
弦の振動を本体が吸い取りすぎてしまい、結果として音が震えたり、詰まったりする「うなり」が生じるのです。
実は、ウルフが出るのは「楽器がよく鳴っている証拠」でもあります。鳴らない楽器にはウルフも出にくいのです。
2. ウルフキラーの「最新の原理」と種類
ウルフキラーの役割は、一言で言えば「振動のブレーキ」です。
弦の一部に「重り」を載せることで、特定の周波数で暴走しようとするエネルギーを吸収し、楽器全体のバランスを整えます。
最近では、主に以下の3つのタイプが主流です。
① 伝統的な「ネジ式(真鍮・ゴム付き)」
最も一般的な、円筒形の金属の中にゴムが入っているタイプです。弦を挟んでネジで固定します。
メリット
安価で、どこでも手に入る。
デメリット
ゴムが経年劣化することや、締めすぎると弦の響きを止めすぎてしまうことがある。
② 最新の「ネジなし・点接触タイプ(New Harmonyなど)」
最近のプロ奏者の間で人気なのが、真鍮製の非常にシンプルなタイプです。
ゴムを使わず、弦に直接「点」で接触して固定します。
メリット
楽器全体の響きを殺さず、ウルフだけをピンポイントで狙い撃ちできる。
原理
弦にわずかな「質量」を加えることで、
③ 画期的な「マグネット式(Krentzなど)」
駒下の弦に付けるのではなく、表板の内外を強力な磁石で挟む最新の装置です。
原理
弦ではなく、楽器本体(表板)の固有振動数そのものを変化させます。
弦の振動を物理的に邪魔しないため、音色への影響が極めて少ないのが特徴です。
3. 【実践】適切な場所を見つける「黄金のルール」
さて、ここからが本題です。
楽器一台ごとに、最適な場所はミリ単位で異なります。
適切な場所を見つけるための、最新のステップをご紹介します。
ステップ1:ターゲットの音を確認する
まずは、自分の楽器のどこでウルフが出るかを正確に把握します。
G線のF#で出るのか? それともFに近いのか?
その音をしっかり覚えておきましょう。
ステップ2:取り付ける弦を選ぶ
もしG線で効果が薄い場合は、C線に付けてみてください。
C線に付けると、楽器全体の音色に深みが出たり、
高音域のキンキンした音が落ち着いたりする副次的な効果もあります。
ステップ3:音程で場所を決める(重要!)
ここが最も科学的な調整ポイントです。
原理
この短い部分から出る音(裏駒の音)を、「ウルフの音と同じ音程(またはそのオクターブ上)」に合わせるのが基本です。
調整
ステップ4:ミリ単位の微調整
理論上の場所が決まったら、実際に演奏しながら数ミリずつ上下にスライドさせます。
4. 調整の際の注意点とコツ
締めすぎに注意
ネジ式のタイプは、ギチギチに締めると弦が潰れたり、音がデッド(死んだ音)になったりします。
止まる程度の力で十分です。
季節で変わる
木は湿度で変化します。夏にベストだった場所が、冬にはウルフを止めきれなくなることもあります。
季節の変わり目には再調整が必要です。
消しすぎない
ウルフを完全に「無」にしようとすると、楽器全体の魅力的な倍音まで消えてしまうことがあります。
「演奏に支障がない程度に大人しくさせる」くらいが、最も良い音を保つコツです。
おわりに
ウルフキラーは、単なる「消音器」ではありません。
あなたのチェロが持つエネルギーをコントロールし、最高のパフォーマンスを引き出すための「調律デバイス」です。
自分の耳を信じて、ぜひ「ここだ!」という場所を見つけてみてください。
どうしても解決しない場合は、信頼できる工房の職人さんに相談するのも一つの手ですよ。
以上、ご参考になれば幸いです。
