▶病院の敷地内薬局に対する厚生労働省の対応の変化を教えて!

薬剤師の皆様へ
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病院の敷地内薬局に対する厚生労働省の対応の変化を教えて!

最近、大きな病院のすぐ隣や、あるいは病院と同じ建物の中に薬局があるのをよく見かけませんか?

いわゆる「敷地内薬局」と呼ばれるものです。

かつては「医薬分業」の精神から厳しく制限されていたこの形態ですが、ここ数年、厚生労働省の対応は目まぐるしく変化しています。

しかも、2026年(令和8年)の最新の診療報酬改定では、

いよいよ「立地でお客さん(患者さん)を呼ぶ時代は終わりだよ」という強いメッセージが突きつけられました。

今回は、この敷地内薬局をめぐる厚労省の「飴と鞭」、そして最新の激変ぶりについて、詳しく解説していきますね。

 

1. そもそも、なぜ敷地内薬局が増えたのか?

昔は、病院と薬局は物理的にフェンスや公道で隔てられていなければならないという「構造独立性」のルールが非常に厳格でした。

これは、病院と薬局が癒着して、患者さんの薬を独占したり、不必要な薬を出したりするのを防ぐためです。

ところが、2016年にこの規制が緩和されました。

患者さんの利便性

雨の日でも濡れずに移動できる、高齢者や車椅子の方の負担が減る。

医療の質

病院の医師と薬局の薬剤師が密に連携しやすい。

こうした「患者さん第一」の視点から、病院の敷地内に薬局を置くことが認められるようになったのです。

これが敷地内薬局ブームの始まりでした。

 

2. 厚労省のジレンマ:「便利だけど、これでいいの?」

緩和によって一気に増えた敷地内薬局ですが、厚労省は次第に危機感を抱き始めます。

なぜなら、多くの敷地内薬局が「病院から出てきた患者さんを自動的に受け入れるだけ」の、

いわば「立地頼みの営業」になっていたからです。

本来、厚労省が目指しているのは、自宅の近くで何でも相談できる「かかりつけ薬局」の普及です。

しかし、病院の敷地内にあると、患者さんはそこを「病院の一部」だと思い、家の近くの薬局には行かなくなってしまいます。

そこで厚労省は、数回にわたる診療報酬改定を通じて、じわじわと「敷地内薬局への締め付け」を強めてきました。

 

3. 2024年度改定:収益性の高い薬局への「メス」

2024年度の改定では、敷地内薬局が算定する「特別調剤基本料」がさらに引き下げられました。

それまでは、特定の病院からの処方箋が7割を超えると低い点数になっていましたが、これが5割にまで厳格化されたのです。

つまり、「半分以上の患者さんがその病院の人なら、営業努力なしで儲かっているとみなして、

国から払うお給料(診療報酬)をカットしますよ」という通告です。

さらに、大手チェーン薬局が展開する敷地内薬局に対しては、グループ全体の規模に応じた減算も強化されました。

 

4. 2026年度最新改定:ついに「抜け道」が封鎖された!

そして、最新の2026年度(令和8年度)診療報酬改定。

ここで厚労省は、これまで業界で横行していた「テクニック」を真っ向から否定する大胆な策に打って出ました。

 

① 「同一建物内の診療所」という免罪符の削除

これまでは、大きな病院の敷地内であっても、その薬局が入っているビルの中に「小さなクリニック(診療所)」を一つでも誘致すれば、

敷地内薬局としての厳しい減算を免れることができるという「特例(除外規定)」がありました。

今回の改定では、この「ただし書き」による除外規定がついに削除されました。

これにより、「医療モールを装った敷地内薬局」は一気に苦境に立たされることになります。

 

② オンライン診療施設の設置も対象に

最近増えている「薬局内にオンライン診療用のブースを置く」という形態。

これも、「特定の医療機関との結びつきが強すぎる」として、特別調剤基本料の対象に含まれることになりました。

立地や利便性だけで囲い込む手法は、ことごとく制限される流れです。

 

③ 衝撃の「門前薬局等立地依存減算」の新設

これが今回最大のトピックです。敷地内薬局だけでなく、病院のすぐ目の前にある「門前薬局」もターゲットになりました。

特定の病院への依存率が高く、かつ地域への貢献(在宅医療への対応など)が不十分な薬局に対しては、一律で点数をガツンと下げる「門前薬局等立地依存減算(▲15点)」が導入されたのです。

 

5. 今後の展望:薬局は「場所」から「機能」へ

厚労省のメッセージは一貫しています。

「病院の近くに店を構えて待っているだけで、高い報酬をもらえると思わないでください。
これからは、たとえ敷地内にあっても、地域住民の健康を支え、夜間対応や在宅訪問もしっかり行う薬局だけを評価します。」

この変化により、現在では一部の病院で「敷地内薬局の公募に応募者が現れない」とか

「採算が合わずに撤退する」といった現象も起き始めています。

 

まとめ

敷地内薬局に対する厚労省の対応は、「利便性のための解禁」から「依存を防ぐための厳格な制限」へと完全にシフトしました。

私たち利用者にとっては、敷地内薬局は「安くて便利(診療報酬が低いので患者の窓口負担も安くなる傾向がある)」というメリットがありますが、

中長期的には「どの薬局が本当に自分の健康を親身に考えてくれるか」を見極める目が必要になりそうです。

薬局選びの基準が、「近さ」から「頼りがい」に変わる。

2026年は、日本の薬局のあり方が根本から問われる、まさに歴史的な転換点と言えるでしょう!

もし、あなたの通っている薬局が「最近サービスが手厚くなったな」と感じたら、

それはこうした国の厳しい方針を受けて、薬剤師さんたちが「選ばれる薬局」になろうと努力している証拠かもしれませんね。

以上、ご参考になれば幸いです。

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