▶70歳以上も【原則3割負担】へ?議論が呼ぶ波紋と私たちの家計へのリアルな影響

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70歳以上も【原則3割負担】へ?議論が呼ぶ波紋と私たちの家計へのリアルな影響

皆さん、こんにちは。

近年、特に社会保障費の議論の中で「70歳以上の医療費自己負担割合の見直し」が大きな焦点となっています。

特に「原則3割負担」という言葉を聞くと、

私達の生活にどれだけ影響があるのだろう?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、この議論は、私たち現役世代の負担軽減と、

すでに70歳以上の高齢者の方々の家計の双方に、無視できない大きな影響を及ぼします。

現在の最新情報と、具体的な影響について、詳しく解説していきましょう。

 

1. 議論の背景:なぜ「3割」が求められているのか?

高齢者の医療費負担割合の議論は、日本の社会保障制度全体が抱える構造的な問題に起因しています。

 

1. 医療費の急増と現役世代の負担限界

日本の高齢化は世界に類を見ないスピードで進んでいます。

高齢者が増えれば、当然ながら医療を必要とする人も増え、医療費の総額は年々増加しています。

現在、高齢者の医療費(後期高齢者医療制度)の約80%は、主に税金と現役世代が納める保険料で賄われています。

この財源の構造上、医療費が増大すればするほど、

現役世代の保険料負担や税負担が重くなるという仕組みです。

財務省などが「原則3割負担」を提案する背景には、

「支払い能力のある高齢者にも相応の負担を求め、現役世代の負担を軽減する」

という強い目的があります。

これは、全世代型社会保障を目指す上での「世代間公平」の視点から議論されています。

 

2. 所得に応じた負担の原則

現在、70歳以上の医療費自己負担割合は、主に以下のようになっています

(75歳未満と75歳以上で制度は異なりますが、ここでは70歳以上全般の傾向として概説します)。

①所得区分 ②窓口負担割合 |


  • ①現役並み所得者 ②3割
  • ①一定以上の所得がある方 ②2割
  • ①上記以外(多数) ②1割

ここで議論されている「原則3割」とは、現役並み所得者以外の方、

つまり現在の1割・2割負担の方々の負担割合を、

支払能力に応じて段階的または一律に3割に引き上げるべきではないかという提案です。

 

2. 私たちの家計への「リアルな影響」

この見直しは、大きく分けて二つの層に影響を与えます。

 

A. 既に70歳以上の方(またはご家族)への影響

最も直接的な影響を受けるのは、現在1割または2割負担で医療を受けている高齢者の方々です。

窓口負担額は最大3倍に

例えば、現在1割負担の方が3割になれば、窓口で支払う医療費は単純に3倍になります。

2割負担の方が3割になれば1.5倍です。

慢性疾患の費用増

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患(生活習慣病)を抱え、毎月定期的に通院・服薬している高齢者は多数います。

仮に、これらの治療で月に5,000円の医療費がかかっていた場合、

1割負担(500円)から3割負担(1,500円)になれば、年間の負担増は12,000円に及びます。

複数の慢性疾患がある場合は、この負担はさらに嵩みます。

「受診控え」のリスク

医療経済学の研究では、自己負担が増えると、

特に低所得層や治療への関心が低い層で「受診控え」が発生することが指摘されています。

受診や服薬を控えた結果、病気が重症化し、かえって入院や手術など高額な医療費が必要になるという「悪循環」に陥る懸念があります。

これは、高齢者の健康悪化だけでなく、社会全体の医療費を中長期的に押し上げるリスクも含んでいます。

高齢者世帯の生活困窮リスク

特に単身の高齢者世帯や基礎年金のみで生活する低所得の高齢者層にとって、

医療費の負担増は生活水準を急激に低下させ、貧困化のリスクを増大させます。

 

B. 現役世代(保険料支払い者)への影響

「原則3割」の議論は、現役世代の家計に直接影響を与えるものではありませんが、

中長期的な視点で見れば大きなメリットがあります。

将来的な保険料・税負担の抑制

高齢者自身が医療費の自己負担割合を高めることで、その分だけ公費(税金)と現役世代の保険料からの支出が抑制されます。

これにより、将来的に私たちが支払う健康保険料の急激な上昇を抑える効果が期待できます。

制度の持続可能性

現行のまま高齢者医療費の増大を放置すれば、いずれは制度が破綻しかねません。

「原則3割」の議論は、社会保障制度を次の世代に引き継ぐための「持続可能性」を高めるための施策の一つと位置づけられます。

 

3. 今後の見通しと「高額療養費制度」の重要性

最新の議論では、「一律3割」という急進的な提言は、短期的には実現しないという見方が大勢を占めています。

むしろ、既に2022年10月から75歳以上の後期高齢者医療制度において、

一定以上の所得のある方の窓口負担が1割から2割に引き上げられたように、今後も

「段階的かつピンポイントな負担増(2割負担の対象拡大など)」

が断続的に続くシナリオが最も現実的とされています。

 

見落としてはならないセーフティネット:高額療養費制度

しかし、医療費の負担が増えることへの最大のセーフティネットが「高額療養費制度」です。

これは、

ひと月(同じ月内)に支払った医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。

例えば、現行の70歳以上の一般所得者(1割または2割)の場合、この月ごとの負担限度額が設定されています。

たとえ窓口負担割合が上がったとしても、この高額療養費制度があるため、青天井に医療費がかかるわけではありません。

ただし、通院の度に窓口で支払う金額は確実に増えるため、

特に慢性疾患の高齢者にとっては、月々の家計のやりくりに大きな影響が出ることは避けられません。

 

まとめ

現在議論されている「70歳以上も医療費原則3割」の提言は、

実現すれば、医療ニーズの高い高齢者の方々の家計に大きな負担をもたらします。

一方で、これは現役世代の保険料負担を抑制し、

将来の社会保障制度の持続可能性を高めるという二律背反の課題を解決しようとする試みです。

私たちは、この議論の動向を注視するとともに、ご自身の、またはご家族の老後資金計画において、

医療費の自己負担が増える可能性を織り込んでおくことが、非常に重要になります。

以上、ご参考になれば幸いです。

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