褥瘡(じょくそう)は、長時間同じ姿勢でいることによって皮膚や組織に圧力がかかり、血流が低下することで生じる傷です。
特に寝たきりの高齢者や移動が困難な患者に多く見られます。
褥瘡の治療には、陰部や背中などの圧迫される場所での皮膚の保護と、感染防止、さらに傷の治癒を促進するための適切な外用薬が必要です。
今回は、褥瘡に使用する塗り薬の特徴や使い分けについて、最新の情報をもとに詳しく解説します。
1. 褥瘡治療における外用薬の役割
褥瘡の治療には、以下のような外用薬が使われます。
- 感染防止
- 創傷の治癒促進
- 痛みの軽減
- 滲出液の制御
褥瘡の外用薬は、その用途や創傷の状態に応じて使い分けることが重要です。
2. 褥瘡に使われる主な塗り薬の種類
2.1 銀イオンを含むクリーム
銀を含む製剤は、強力な抗菌作用を持ち、特に細菌感染が懸念される場合に効果的です。
たとえば、ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)は、銀イオンが細菌の細胞壁や細胞膜に作用し、細菌の増殖を抑制します。
このクリームは、感染した創面に適しています。
2.2 オルセノン軟膏
オルセノン軟膏は、肉芽形成を促し、治癒を支援します。
クリーム基剤であるため、塗りやすく、落ちやすいという特徴があります。
この特性により、創面の管理がしやすく、特に赤色期から白色期の褥瘡に効果的です。
2.3 アクトシン軟膏R
水溶性基剤を使用しているアクトシン軟膏Rは、盛り上がった肉芽を抑制し、浮腫の軽減と上皮化を促進します。
特に、創傷が湿潤している場合に有用で、水分を保持しつつ過剰な湿気を排除する役割を果たします。
2.4 ユーパスタコーワ
この薬は、過剰な滲出液が見られる場合に使用され、創部の乾燥を防ぎます。
特に、浸出液の管理が重要な褥瘡に適しています。この薬剤は、創傷の保湿を行いつつ、感染リスクを低減させます。
2.5 アルギン酸製剤
アルギン酸製剤は、重度の滲出創に対して使用され、進化した吸収能力を持っています。
傷口の環境を整え、細菌感染を防ぐ効果があります。特に湿潤治療が求められる場合に推奨されます。
3. 使用法と注意点
褥瘡に対して用いる外用薬は、その特性や創傷の状態に基づいて適切に選択されるべきです。
3.1 提供体としての基剤の選定
基剤は、創傷の状態により選択すべきです。
油脂性基剤は乾燥創に適し、水分含有率の低い乳剤性基剤は湿潤創に向いています。
また、滲出液が過多であれば吸収性の高い製剤を用いることが推奨されます。
3.2 薬剤の重複使用を避ける
褥瘡の治療において、複数の外用薬を同時に使用するかどうかは慎重に判断する必要があります。
薬剤が互いに影響し合う可能性があるため、基本的にはひとつの薬剤を適切に使用することが望ましいです。
3.3 定期的な評価と更新
褥瘡の治療は、定期的に評価し、傷の進展に応じて薬剤を変更することが重要です。
創傷の治癒状態を見極めることで、より適した治療が可能になります。
4. まとめ
褥瘡の治療には多くの選択肢があり、それぞれが異なる特性を持っています。
最新の治療法では、創傷の状態を正確に評価し、その状態に応じた薬剤を選択することが求められます。
銀のような抗菌成分を含む薬剤や、肉芽形成を促進する製剤を適切に使い分けることで、早期回復が期待できます。
褥瘡の治療においては、患者の痛みを軽減し、生活の質を向上させるため、専門的な知識を持ってアプローチすることが重要です。
以上、ご参考になれば幸いです。
参考資料
1. [[PDF] 褥瘡の薬ってどんなものがあるの?](https://www.kanagawa-rehab.or.jp/wp-content/uploads/sites/2/2019/02/jyokusoukusuri.pdf)
2. [褥瘡と薬のキホン – みゆきの里](https://miyukinosato.or.jp/hhlab/hhlab-936/)
3. [[PDF] 褥瘡の治療 – 津山中央病院](https://tch.or.jp/asset/00032/renkei/CCseminar/20150223jokuso.pdf)
4. [褥瘡(床ずれ)治療薬をわかりやすく解説!黒色期~黄色期 – 薬剤師](https://pharmacist.m3.com/column/kurumi/6226)
5. [褥瘡(床ずれ)の治療について 〜外用薬は適『剤』適所が大切です](https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20220418)
6. [[PDF] 5.褥瘡(床ずれ)の予防方法と治療に用いる外用薬・ドレッシング材](https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/05.pdf)
7. [褥瘡・皮膚潰瘍治療薬の解説|日経メディカル処方薬事典](https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8342.html)
8. [第11回 ゲーベンクリームの特徴と使い方(褥創を例に)](https://www.ekinan-clinic.com/publication/108)
9. [[PDF] 3.褥瘡治療の実際 ②外用薬,医療材料等の使い方 – 日本老年医学会](https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_of_geriatrics_50_5_597.pdf)