リウマチの治療における生物学的製剤は、従来の治療薬とは異なり、特定の炎症性メカニズムをターゲットにした薬剤です。
これにより、より効果的に症状を軽減し、関節の破壊を防ぐことが期待されています。
以下では、リウマチ治療に用いられる生物学的製剤について、
それぞれの薬品名(成分名)、特徴、効果、用法用量、副作用、および薬価を詳しく解説していきます。
生物学的製剤とは?
生物学的製剤は、化学的に合成して作られた薬剤ではなく、遺伝子組み換え技術を用いて細胞培養など生物学的技法によりつくられた薬剤のことです。
作られる過程は合成薬に比べて複雑で、手間や費用がかかります。
生物学的製剤は蛋白質で、われわれのからだにある抗体や受容体、あるいは細胞表面の分子などと同様の構造をもっています。
関節リウマチなど多くの病気の治療に用いられています。
関節リウマチ
関節リウマチで使用される生物学的製剤は大きく分けると、
サイトカインと呼ばれる細胞からつくられ炎症を引き起こす蛋白であるTNFやIL-6を標的としてこれらを抑える薬剤(それぞれTNF阻害薬、IL-6阻害薬)、
リウマチの免疫異常を引き起こすリンパ球のひとつであるT細胞を抑える薬剤(T細胞共刺激分子調節薬)の3種類に分けられます。
1. TNF阻害薬
アダリムマブ(商品名: ヒュミラ)
特徴
アダリムマブは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を特異的に阻害し、炎症を抑制する作用があります。
効果
リウマチの活動性を低下させ、関節の腫れや痛みを軽減します。また、関節破壊の進行を抑える効果もあります。
用法用量
初回は80 mgを皮下投与し、その後は40 mgを2週間ごとに投与します。
副作用
感染症リスクの増加、注射部位の反応、アレルギー反応などが報告されています。
薬価
アダリムマブの1回分薬価は約30,000円程度です。
インフリキシマブ(商品名: レミケード)
特徴
インフリキシマブもTNF-αを阻害する生物学的製剤で、静脈内投与が必要です。
効果
リウマチの症状を劇的に改善する能力があり、特に中等度から重度のリウマチ患者に有効です。
用法用量
初回投与として3 mg/kgを静脈内に投与し、その後は2週ごとに投与を続け、維持療法に移行します。
副作用
感染症、アレルギー反応、心不全などのリスクがあります。
薬価
インフリキシマブの薬価は約60,000円以上になります。
ゴリムマブ(商品名: シムジア)
特徴
ゴリムマブは、TNF-αを中和する抗体です。自己注射が可能で、患者の自己管理がしやすい点が特徴です。
効果
リウマチの症状を軽減し、機能的改善をもたらします。
用法用量
初回は400 mgを皮下に投与し、2週間後に100 mgを投与、その後は4週間ごとに100 mgを投与します。
副作用
感染症や注射部位の反応、重篤なアレルギー反応が報告されています。
薬価
薬価は約40,000円程度です。
セルトリズマブ ペゴル(商品名: ゼルヤンツ)
特徴
セルトリズマブ ペゴルは、TNF-αを特異的に阻害するモノクローナル抗体です。ペゴ化により、体内での半減期が延長されています。
効果
リウマチの炎症と痛みを効果的に抑制します。
用法用量
初回は400 mgを皮下に投与し、2週間後に400 mg、以降は4週間ごとに200 mgを投与します。
副作用
感染症リスク、頭痛、吐き気などが見られることがあります。
薬価
薬価は約35,000円程度です。
エタネルセプト(商品名: エンブレル)
特徴
エタネルセプトは、TNF-αの働きを抑える受容体の融合蛋白で、皮下投与されます。
効果
炎症を効果的に抑えることができ、関節リウマチの治療に有用です。
用法用量
初回に50 mgを皮下投与し、その後は1週間ごとに50 mgを投与します。
副作用
感染症、注射部位の反応などがあります。
薬価
約28,000円程度です。
2. IL-6阻害薬
トシリズマブ(商品名: アクテムラ)
特徴
トシリズマブは、インターロイキン6(IL-6)の受容体を阻害することで、炎症を抑える効果があります。
効果
リウマチの症状を改善し、関節の損傷を予防します。
用法用量
初回は静脈内に4 mg/kgを投与し、その後は8 mg/kgを4週間ごとに投与します。皮下投与も可能です。
副作用
感染症、肝機能障害、高コレステロール血症などがあります。
薬価
薬価は約50,000円です。
3. T細胞共刺激分子調節薬
アバタセプト(商品名: オレンシア)
特徴
アバタセプトは、T細胞表面にあるCD80/86と、T細胞にシグナルを送る細胞表面にあるCD28という分子の結合を阻害します。
これにより、T細胞の活性化が抑制され、炎症が軽減されます。アバタセプトは、主にT細胞に作用するため、他の免疫細胞への影響を抑え、感染症のリスクを軽減できる可能性があります。
効果
関節リウマチの治療において、他の生物学的製剤や従来の抗リウマチ薬と並んで、重要な選択肢の一つとなっています。
用法用量
投与初日に負荷投与としてアバタセプト(遺伝子組換え)点滴静注用製剤の点滴静注を行った後、同日中に125mgの皮下注射を行い、その後125mgを週1回、皮下注射します。
副作用
感染症やアレルギー反応に注意が必要です。
薬価
約30,000円程度です。
3. その他∶JAK阻害薬
トファシチニブ(商品名: ゼルヤンツ)
特徴
JAK阻害薬は、細胞内のシグナル伝達を直接阻害する新しいクラスの薬剤です。
効果
炎症を抑え、関節の機能を改善する効果があります。
用法用量
1日1回10 mgを経口投与し、効果に応じて5 mgに減量することがあります。
副作用
感染症、血栓症、肝機能障害があります。
薬価
薬価は約22,000円です。
ペフィシチニブ(商品名: オルミエント)
特徴
新しいタイプのJAK阻害薬で、より選択的にJAK分子をブロックします。
効果
炎症性症状を抑え、機能的改善をもたらします。
用法用量
1日1回15 mgを経口投与します。
副作用
感染症、肝機能障害、高脂血症などがみられることがあります。
薬価
薬価は約25,000円です。
4. 新しい治療の展望
最近では、遺伝子治療や細胞治療など最新の医療技術を取り入れた治療法も研究されています。
これにより、より効果的で安全な治療法の開発が期待されています。
また、個々の患者に最適な治療法を選択するためのバイオマーカーの研究も進行中です。
定期的な医学情報の更新を追うことが、患者にとっても重要な意味を持ちます。
医療の進展に伴い、リウマチ患者の治療選択肢は増え続けており、より快適な生活を送るための道が広がっています。
リウマチの治療は個別の症例に基づいて行われるため、医師との対話を通じて自分に合った治療法を見つけることが大切です。
自分自身の健康を守るために、適切な知識と情報を持つことが、快適な日常生活に繋がります。
以上の情報を参考に、自分に合った治療を見つけて、毎日をより充実させていきましょう。
参考資料
[生物学的製剤・BS – 関節リウマチの治療 – 薬物療法](https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/dtherapy/biologics/)
[関節リウマチ・膠原病の治療薬メトトレキサート – 宇多野病院](https://utano.hosp.go.jp/section/13_06.html)
[リウマチ治療法:日経DI](https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/digital/201512/544900.html)
[関節リウマチの薬は主に5種類|効果や副作用を詳しく解説](https://fuelcells.org/topics/58453/)
[[PDF] メトトレキサートを服用する患者さんへ – 日本リウマチ学会](https://www.ryumachi-jp.com/pdf/mtx.pdf)
[関節リウマチ治療薬 – J-Stage](https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/54/1/54_1_46/_pdf/-char/en)
[[PDF] 抗リウマチ薬](https://www.rheuma-net.or.jp/securewp/wp-content/uploads/2023/11/guideline5to8.pdf)
[【リウマチ治療薬】JAK阻害薬について~生物学的製剤との違いと …](https://ike-seikei.jp/jakinhibitor-blog/)
[[PDF] 関節リウマチの治療薬について – 兵庫県立病院薬剤部](https://www.pharm-hyogo-p.jp/renewal/kanjakyousitu/r5k59.pdf)