定年退職や役職定年を迎え、人生の区切りとなる「還暦」。
これからの数十年の生活を支えるための資産運用は、現役時代とは異なる視点が必要です。
実際の資産運用は自己責任でお願い致します。
還暦からの運用で重視すべき3つのポイント
まず、還暦世代のNISA戦略で最も重視すべきは、以下の3点です。
資産の「保全」と「安定的な成長」のバランス
現役世代のようにリスクを大きく取って「一攫千金」を目指す必要はありません。
むしろ、大切な老後資金を大きく減らさないよう、「守り」の視点が重要です。
しかし、インフレや人生100年時代を考えると、ただ預貯金にしておくだけでは目減りしてしまいます。
ゆるやかながら着実な資産の成長を目指す必要があります。
価格変動(リスク)の低減
運用期間が相対的に短くなるため、
精神的な安心のためにも、値動きの穏やかな商品を選びたいところです。
換金性の高さ(出口戦略)
数年後、あるいは急な出費が必要になった際に、すぐに現金化できる流動性の高い商品を選ぶことが肝心です。
新NISAの活用法:還暦世代が選ぶべき「道」
2024年1月から始まった新NISA(少額投資非課税制度)は、非課税保有期間が無期限となり、年間の投資枠も大幅に拡大しました。
これは、老後資金の運用に最高の環境を提供してくれます。
還暦世代が活用すべきは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方です。
「つみたて投資枠」で選ぶべき王道:全世界株式か、全米株式か
つみたて投資枠で投資できるのは、金融庁の定める「長期・積立・分散投資に適した」投資信託です。
老後資金の「安定的な成長」を実現するために、この枠で核となる資産を築きましょう。
王道中の王道:全世界株式インデックスファンド
最もおすすめするのは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などに代表される、世界中の株式にまとめて投資するインデックスファンドです。
メリット
自動的に全世界に分散投資してくれるため、特定国(例えばアメリカ)の経済が低迷しても、他国の成長でカバーされる安心感があります。
まさに「世界の成長を丸ごと享受する」という、最強の分散効果が得られます。
還暦世代への適性
投資先に悩む必要がなく、投資後も基本的に放置(バイ・アンド・ホールド)できるため、精神的な負担が極めて少ないのが魅力です。
集中投資で高リターンを狙う:全米株式インデックスファンド
高いリターンを期待したい場合は、「S&P500」や「全米株式(VTI)」に連動するファンドを選ぶ選択肢もあります。
メリット
過去数十年にわたって、米国株は全世界株をアウトパフォームしており、今後も革新的な企業が多いことから、高い成長が期待できます。
還暦世代への適性
リターンは魅力的ですが、全世界株に比べて値動きがやや大きくなる(リスクが高くなる)傾向があります。
投資経験や、資産全体に占めるNISAの割合に応じて検討するのが良いでしょう。
アドバイス
迷ったら「全世界株式」から始めましょう。
「成長投資枠」で選ぶべき商品:安定性を高める戦略
成長投資枠は、つみたて投資枠よりも幅広い商品に投資できます。
還暦世代は、この枠を使って全体の安定性を高めることを考えましょう。
1. 安定性を加える:バランス型ファンド
成長投資枠を使い、「債券」や「REIT(不動産投資信託)」も組み入れた「バランス型ファンド」を少量組み込むのは有効な戦略です。
メリット
両方を組み合わせることで、資産全体の値動きを穏やかにする効果があります。
選び方
株式と債券の比率が「株式50%:債券50%」といった、比較的債券比率の高いものを選ぶと、より安定性が増します。
2. リスクをさらに抑える:「高配当株ETF」または「日本の高配当株」
毎年のインカムゲイン(配当金)を重視したい場合は、この成長投資枠を利用して、以下の商品を選ぶこともできます。
米国の高配当株ETF(例:SPYD, HDV, VYMなど)
魅力
比較的安定した配当金収入が期待できます。配当金を生活費の足しにしたり、再投資に回したりすることが可能です。
注意点
為替リスク(円高・円安の影響)と、外国税額控除の手続きが必要になる場合があります。
日本の個別高配当株
魅力
円建てで完結するため、為替リスクがなく、手続きも簡単です。
大手商社や通信、金融など、比較的安定した業種の銘柄を選べば、緩やかながらも配当を得ながら成長を期待できます。
注意点
個別株は銘柄固有のリスクがあるため、最低でも5〜10銘柄程度に分散投資することが必須です。
アドバイス
投資初心者の方や、手間をかけたくない方は、個別株や高配当ETFを避けて、
という戦略も十分有効です。
無理のない範囲で、ご自身のリスク許容度に合わせて調整してください。
老後資金の「出口戦略」と「取り崩し方」
還暦からの運用では、いつか資産を「使う」ための出口戦略も並行して考える必要があります。
1. 資産を「分けて」運用する
老後資金を一つの口座で運用するのではなく、「使う時期」に応じて資産を分けるイメージを持ちましょう。
① 直近5年以内に使うお金
預貯金や個人向け国債など、元本割れのリスクがほぼない安全な資産で保有します。
② 5年〜20年後に使うお金
NISA口座で運用し、インデックスファンドなどで積極的に「成長」を目指します。
2. 賢い「取り崩し」のルール
NISA口座から資産を取り崩す際も、無計画に取り崩すのではなく、ルールを決めておくことが重要です。
「定率・定額取り崩し」
のが、資産を長持ちさせるための有名な経験則です。
(例:資産が3,000万円なら、年間120万円まで取り崩す)
暴落時の取り崩しを控える
相場が大きく下落している時期に、元本を削るように売却してしまうのが最悪のパターンです。
相場が悪い時は、直近で使うために確保しておいた
「① 直近で使うお金」から補填し、投資信託の売却は回復を待つようにしましょう。
まとめ:還暦からの新NISA戦略
還暦からの新NISA戦略は、「守り」と「成長」のバランスを意識することが成功の鍵です。
軸となる商品
「全世界株式」インデックスファンドで、手間なく世界の成長を取り込む。
分散と安定
バランス型ファンドや高配当株の組み入れも検討し、値動きを穏やかにする。
出口戦略
資産を「直近で使う分」と「長期で運用する分」に分け、計画的な「4%ルール」などを参考に賢く取り崩す。
新NISAは非課税期間が無期限です。
焦らず、ご自身のペースで、老後資金をしっかりと育てていきましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。



