前回はチェロ用の安価なピックアップマイクをご紹介しましたが、
安価なピックアップの性能を最大限に引き出し、ライブでも満足のいく音色を作るためには、プリアンプ(DIボックス)の存在が不可欠です。
高価なプリアンプはもちろん素晴らしいですが、今回は2万円台までを目安とした、
「安価だけど実戦で使える」コスパ最強のプリアンプを、最新情報に基づいてご紹介します!
プリアンプが安価なピックアップを「化けさせる」理由
なぜ、安価なプリアンプでも劇的に音質が改善するのでしょうか?その理由は主に3つあります。
1. インピーダンス・マッチング
安価なピエゾピックアップ(Fishman C-100など)は、出力インピーダンスが非常に高い(1M\Omega以上)特性を持っています。
しかし、一般的なPAミキサーの入力はインピーダンスが低い(10k\Omega程度)ため、
プリアンプの多くは、高インピーダンス入力に対応しているため、
この問題を解消し、ピックアップの信号を太く、ロスなく受け止めることができます。
2. 信号レベルの最適化
ピックアップの信号は微弱です。
3. イコライザー(EQ)による音色補正
これが最も重要な機能です。
安価なピエゾ特有の硬質で電子的な響きを、EQで不要な中高域を削り(カット)、
チェロらしい温かい中低域をブーストすることで、
自然で豊かなアコースティックサウンドに近づけることができます。
2025年最新!コスパ最強のチェロ用プリアンプ・セレクション
ここでは、実売価格が2万円台までで購入可能で、チェロ奏者におすすめできるプリアンプをご紹介します。
🥇 【ライブでの定番・確実性】BOSS Acoustic Preamp AD-2
価格帯の目安:約15,000円〜18,000円(税込)
エフェクターの定番ブランドであるBOSSが出している、アコースティックギター/楽器用のプリアンプです。
特徴と魅力
BOSSならではの堅牢な筐体と、シンプルな操作性が魅力です。
特に注目すべきは、独自技術のAcoustic Resonance(アコースティック・レゾナンス)機能です。
操作性
ツマミが少なく直感的で、ライブ中に迷うことなく音作りができます。
NOTCHフィルターも搭載されており、ハウリングが発生しやすい周波数帯域を自動で検知・カットしてくれるため、ハウリング対策としても非常に優秀です。
音質補正
EQ(トーン)ツマミは一つですが、プリアンプとしての基本性能がしっかりしているため、
ピエゾ特有の音の細さを補い、太さを加える役割を果たしてくれます。
おすすめユーザー
初めてプリアンプを購入する方、操作はシンプルで、ライブでのハウリング対策を最優先したい方。
🥈 【多機能性・音色作りの自由度】BEHRINGER V-TONE ACOUSTIC ADI21
価格帯の目安:約5,000円〜8,000円(税込)
「安価」という括りであれば、このBEHRINGER(ベリンガー)のモデルは外せません。
その価格からは想像できないほどの多機能性を誇ります。
特徴と魅力
こちらは、プリアンプ機能に加えて、DIボックス(バランス出力)機能を搭載しています。さらに、
モデリング機能
ADI21は、有名なアコースティック楽器用プリアンプのサウンドをモデリング(シミュレーション)しているとされており、
安価ながら温かみのある本格的なサウンドを再現しようとしています。
操作性
複雑な機能はありませんが、EQで細かく音作りができるため、
おすすめユーザー
予算を極限まで抑えつつ、3バンドEQを使って積極的に音作りを楽しみたい方。
自宅での練習や簡易的な録音にも使えます。
🥉 【コンパクト・プロの予備機にも】MXR M80 Bass D.I. +
価格帯の目安:約22,000円〜26,000円(税込)
(※「ベース用」ですが、実はチェロと相性が良いという隠れた名機です)
こちらは厳密にはベースギター用のDI(ダイレクト・ボックス)ですが、
チェロの音域と低弦楽器としての特性を考えると、非常に相性が良いと、一部のチェロ奏者の間で愛用されています。
特徴と魅力
楽器のプロフェッショナルな現場でも信頼されるMXRブランドの堅牢さ。
そして、3バンドEQとCOLORスイッチ、さらに歪み(ディストーション)チャンネル(通常チェロではオフで使用)を備えているため、音作りの幅が広いです。
チェロとの相性
ベース用であるため、低音域(特にC線)を自然で力強く増幅してくれます。
ピエゾで不足しがちな「音の太さ」を、このベース用DIはしっかりと補ってくれるのです。
また、COLORスイッチをONにすると、あらかじめ設定されたドンシャリ(低音と高音を強調)のEQカーブになり、
アンサンブルで埋もれがちなチェロの音を際立たせる効果もあります。
DI機能
XLRバランス出力も備えているため、長距離のケーブル配線でもノイズに強く、
ライブハウスのPAにそのまま接続できるプロ仕様の仕様です。
おすすめユーザー
ロックやポップスなど、バンドアンサンブルの中でチェロを演奏する方、
頑丈さとプロ仕様のDI機能を求めつつ、音の太さを重視したい方。
プリアンプで「チェロらしい音」を作るためのEQ設定
どのプリアンプを選んでも、イコライザー(EQ)の調整が非常に重要になります。
安価なピエゾピックアップを使う場合の、基本的なチェロのEQ設定のヒントをまとめます。
1. 低音(Low / Bass)
目的
チェロの深みと温かさ(胴鳴り)を加える。
調整
わずかにブースト(100Hz〜300Hz付近)。
ただし、上げすぎるとモコモコしてハウリングの原因になるため注意。
2. 中音(Mid)
目的
ピエゾ特有の硬さや、不快な弓の摩擦音を解消する。
調整
カット(1kHz〜4kHz付近)。
特に2kHz〜3kHzの帯域には、硬い金属的な響きが含まれやすいため、これを削ることで音色がマイルドになります。
3. 高音(High / Treble)
目的
音の輪郭や、左手の動きのクリアさを調整する。
調整
演奏環境や好みに応じて微調整(6kHz以上)。
削りすぎると音の抜けが悪くなり、上げすぎるとシャリシャリしたノイズが増えます。
まとめ:安価なピックアップとプリアンプで実現できること
安価なピックアップ(例:Fishman C-100)と、
今回ご紹介したような実用的なプリアンプ(例:BOSS AD-2 や BEHRINGER ADI21)を組み合わせることで、
高価なマイクシステムに匹敵する「生音に近いサウンド」とまではいきませんが、
以上、ご参考になれば幸いです。
