いつも薬局でお薬を受け取られている皆さん、そして医療・福祉関係者の皆さん、こんにちは!
今日は、来年(2026年度)からの生活保護受給者の医療扶助に関する、非常に重要で具体的な最新情報をお届けします。
厚生労働省の検討会で、生活保護受給者の方が医療機関や調剤薬局を利用する際、
「おくすり手帳の持参を原則とする」という方針が中間整理案として了承されました。
これが何を意味し、なぜ今この取り組みが進められているのか、詳しく掘り下げていきましょう。
なぜ「原則持参」が求められるのか?その背景にある課題
生活保護制度における医療扶助は、受給者の方が必要な医療を受けるための大切な柱です。
しかし、その一方で、いくつか具体的な課題が指摘されてきました。
一番大きな問題は、「重複受診・多剤併用」、つまり
これは、受給者の方ご自身の健康を害するリスクがあるだけでなく、
限られた医療費を効率的に使うという観点からも大きな課題とされています。
おくすり手帳が果たす「安全管理」の役割
この課題を解決するための「切り札」こそが、他でもない「おくすり手帳」です。
皆さんもご存知の通り、おくすり手帳には、いつ、どの病院で、どんなお薬が処方されたかの記録が時系列で残ります。
薬剤師は、この手帳を確認することで、
- 重複投与(同じお薬が何度も出されていないか)
- 相互作用(飲み合わせの悪いお薬がないか)
- アレルギー歴や副作用歴
などをリアルタイムでチェックできます。
これまでは、「持参をお願いします」というレベルだったものが、
生活保護受給者の方については「原則」とすることで、
手帳の活用を徹底し、医療の安全性を格段に高める狙いがあるのです。
特に医療扶助は公費で賄われているため、適正化と健康管理支援の両面から、この原則化が強く推進されることになりました。
薬局の現場はどう変わる?薬剤師の役割と指導の強化
この「原則持参」の方針は、調剤薬局の現場に具体的な変化をもたらします。
1. 薬剤師による持参確認と記録の徹底
受給者の方が薬局に来られた際、薬剤師はこれまで以上におくすり手帳の有無を丁寧に確認することになります。
もし手帳を忘れた場合や持っていない場合は、
- その場で作成・交付することを原則とする。
- 過去の処方歴が分からない場合は、必要ならば処方医や他の薬局への照会を積極的に行う。
といった、情報収集と記録の徹底が求められます。
これは、単に記録を残すためだけでなく、
その場で重複投与などを発見し、未然に健康被害を防ぐための重要なプロセスとなります。
2. 福祉事務所との連携強化
おくすり手帳を持参しないケースが続く受給者の方については、
福祉事務所(生活保護の担当窓口)へ情報が共有されることが想定されます。
これは、「指導・助言」という形で、福祉事務所から改めておくすり手帳の重要性や持参の必要性について受給者の方に働きかけてもらうためです。
例えば、地域によっては、お薬手帳の一冊化を促すための特定のステッカーを配布し、
この手帳を必ず持参するよう指導する取り組みを既に行っている自治体もあります。
今回の「原則持参」は、このような地域ごとの取り組みを、国として一層後押しするものと言えるでしょう。
3. 「デジタル化」へのシフトも視野に
また、最新の情報として、電子版のおくすり手帳(eお薬手帳)の普及も進んでいます。
スマートフォンなどで手軽に管理できるデジタル手帳の利用も、
将来的には「原則持参」の対応策の一つとして、受給者の方にも推奨されていく可能性があります。
「原則」の意味:義務化ではないが、強い要請
ここで重要なのは、今回の決定が「義務化」ではなく「原則」という言葉を使っている点です。
つまり、受給者の方に差別的な医療を提供するわけではなく、
あくまで受給者自身の安全と健康管理の適正化を主眼に置いた、強い協力要請と位置づけられます。
生活保護受給者に対する差別的な対応は、絶対にあってはなりません。
過去には、受給者専用のおくすり手帳が「差別を助長する」として問題となり、廃止された事例もあります。
今回の「原則持参」は、そういった懸念を生む特別な手帳を新たに設けるのではなく、
すべての方に共通の「おくすり手帳」を、安全管理のために積極的に活用していただくという方針です。
まとめ
2026年度から導入が検討されている、生活保護受給者の方のおくすり手帳「原則持参」の方針は、
調剤薬局の薬剤師は、この原則を現場で支えるため、
今まで以上に丁寧な手帳の確認、記録、そして福祉事務所との連携を強化していくことになります。
この取り組みによって、受給者の方々がより安全で、適切な医療を受けられる環境が整うことが期待されます。
以上、ご参考になれば幸いです。
