▶創傷治癒促進薬【フィブラストスプレー】は、粉と液体を混合後どれくらい安定?

薬剤師の皆様へ
この記事は約3分で読めます。
創傷治癒促進薬【フィブラストスプレー】は、粉と液体を混合後どれくらい安定?

フィブラストスプレー(一般名:トラフェルミン)は、褥瘡や皮膚潰瘍の治療において非常に強力な助っ人ですが、そのデリケートな性質から「扱い方」には少しコツが必要です。

特に、薬剤を混ぜ合わせた(溶解した)後の安定性については、効果を最大限に引き出すために最も気をつけるべきポイントです。

最新の知見とガイドラインに基づき、混合後の安定性と保管の注意点について詳しく解説します。

結論:混合後は「冷蔵庫で2週間」が絶対ルール

フィブラストスプレーは、粉末状の薬剤(凍結乾燥品)と添付の溶解液を混ぜて使用しますが、

混ぜた瞬間からカウントダウンが始まると考えてください。

メーカーの公式な安定性データおよび最新の添付文書(2023年改訂版以降も同様)に基づくと、溶解後の安定性は以下の通りです。

  • 期間: 溶解してから2週間以内
  • 温度: 10℃以下(冷蔵庫)保存

この「2週間」という数字は、単なる目安ではなく、

主成分であるトラフェルミン(遺伝子組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子:bFGF)の構造が維持され、治療効果が担保される限界の期間を指しています。

なぜ「2週間」しか持たないのか?

フィブラストスプレーの主成分は「タンパク質」です。

人間が肉や卵を食べると熱で固まったり腐敗したりするように、タンパク質製剤は非常に不安定な物質です。

 

1. 構造の劣化(失活)

トラフェルミンは、特定の立体構造を持つことで傷を治すスイッチを押します。

しかし、水に溶けた状態では時間の経過とともにこの立体構造が崩れやすく、2週間を過ぎるとスイッチを押す力が弱まってしまいます。

 

2. 微生物汚染のリスク

フィブラストスプレーには、一般的な点眼薬や内服薬のような強力な防腐剤が含まれていません。

一度開封してスプレーノズルを装着すると、空気中の細菌が混入するリスクが生じます。

冷蔵保存であっても、

2週間を超えて保管すると雑菌が繁殖し、逆に傷口に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。

安定性を守るための「3つのNG行動」

最新の現場でもよく注意される、安定性を損なうNG行動をまとめました。

 

1. 「常温放置」は数時間でも避ける

「ついうっかり机に出しっぱなしにしていた」というのは、最も避けたい事態です。

室温(特に25℃以上)ではタンパク質の分解スピードが劇的に早まります。
使い終わったら、「すぐに冷蔵庫へ戻す」ことを徹底してください。

2. 「凍結」させてはいけない

「冷やせばいいなら冷凍庫の方が長持ちするのでは?」と思われるかもしれませんが、これは逆効果です。

凍結するとタンパク質の構造が破壊され、解凍しても元の効果は戻りません。

冷蔵庫の中でも、冷気が直接当たる奥の方は避け、

ドアポケットなど凍結の心配がない場所に保管するのがベストです。

 

3. 「継ぎ足し」は厳禁

もし2週間経って薬が残っていても、新しい瓶に古い薬を混ぜたり、期間を延長して使い続けたりしないでください。

古い薬が混ざることで、新しい薬剤の安定性まで損なわれてしまいます。

 

溶解前の安定性と「もしも」の時の知識

参考までに、混ぜる前の状態であればどれくらい安定なのかも知っておくと安心です。

溶解前(粉末の状態): 冷所保存であれば36ヶ月(3年間)安定です。

持ち運びの時間は?

病院で処方されてから自宅に持ち帰るまでの数時間程度であれば、常温でも大きな問題にはなりませんが、

夏場などは保冷バッグと保冷剤を使用するのが望ましいです。

 

まとめ:効果を最大化するために

フィブラストスプレーは、正しく使えば深い傷やなかなか治らない潰瘍に対して素晴らしい力を発揮します。

しかし、その力は「冷蔵庫で2週間」という厳格な安定性の上に成り立っています。

もし、混ぜた日付を忘れてしまいそうな場合は、

ボトルのラベルや付属の保存袋に「溶解した日」をマジックで大きく書き込んでおく

のが、医療現場でも推奨されている最も確実な管理方法です。

「もったいないから」と期限を過ぎて使うことは、治癒を遅らせる原因にもなりかねません。

2週間を過ぎたものは、たとえ残量があっても潔く廃棄し、新しいボトルを準備するようにしましょう。

以上、ご参考になれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました