▶高血圧治療薬・テラムロ配合錠は、どうして出荷制限(出荷調整)なの?

心と体のケア
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高血圧治療薬・テラムロ配合錠は、どうして出荷制限(出荷調整)なの?

テラムロ配合錠がなかなか手に入らない……」「また出荷制限がかかっているの?」と、

現場の薬剤師さんや、お薬を服用されている患者さんから不安の声が上がっています。

2026年現在、高血圧治療のスタンダードな選択肢の一つである「テラムロ配合錠(テルミサルタンとアムロジピンの配合剤)」は、非常に厳しい供給状況にあります。

なぜこれほどまでに混乱が続いているのか。

その背景には、単なる「一つのメーカーのミス」では片付けられない、

日本のジェネリック医薬品業界が抱える深刻な構造的問題が横たわっています。

今回は、最新の情報を整理しながら、その理由を具体的かつ分かりやすく解説していきます。

 

止まらない「限定出荷」と「供給停止」の連鎖

まず、現状を端的にお伝えすると、テラムロ配合錠は多くのメーカーにおいて「限定出荷(出荷調整)」、あるいは「供給停止(欠品)」という非常に不安定なフェーズにあります。

かつては「安価で安定して手に入る」のが当たり前だったジェネリック医薬品ですが、

今では「いつ入ってくるかわからない」という綱渡りの状態が常態化してしまいました。

では、なぜテラムロ配合錠がこれほど狙い撃ちされたように供給不足になっているのでしょうか?

 

1. 原薬や製剤バルクの「試験不適合」と「安定性問題」

直近の大きな要因として挙げられるのが、製造工程におけるトラブルです。

特定のメーカー(東和薬品など)では、生産に使用する「原薬」が試験不適合となり、安定した生産ができなくなる事態が発生しました。

医薬品は人の命に関わるものですから、少しでも基準に満たない原薬が見つかれば、

そのロットはすべて破棄、あるいは生産ラインを止めざるを得ません。

また、別のメーカー(第一三共エスファなど)では、

「製剤バルク(製品になる一歩手前の状態)」の安定性試験に想定以上の時間を要してしまい、

入庫時期が未定になるというトラブルも報告されました。

 これにより、在庫が底をつき、新規の採用を辞退したり、既存の取引先への出荷を制限したりする「限定出荷」に追い込まれたのです。

 

2. 「ドミノ倒し」による需要の集中

これが最も厄介な問題です。例えば、A社という大手メーカーが製造トラブルで出荷を止めると、

その分の需要がB社やC社に一気に流れ込みます。

しかし、B社やC社も自社の本来の顧客分しか在庫を持っていません。

そこへ数倍、数十倍の注文が殺到すれば、当然パンクしてしまいます。

結果として、トラブルを起こしていないメーカーまでもが「自社の既存顧客を守るため」に出荷制限をかけざるを得なくなる……。

これが、業界で「ドミノ倒し」と呼ばれる現象です。

テラムロ配合錠は、ARB(テルミサルタン)とカルシウム拮抗薬(アムロジピン)という、高血圧治療で最も頻用される組み合わせの薬です。

利用者が非常に多いため、一度どこかで綻びが出ると、その影響範囲は他の薬よりも圧倒的に広くなってしまうのです。

 

3. 先発品メーカーの撤退と代替供給の難しさ

さらに、供給をより複雑にしているのが、先発品メーカーや一部の大手ジェネリックメーカーの動きです。

近年、医薬品の「販売中止」や「製造権の譲渡」が相次いでいます。

例えば、ヴィアトリス製薬(旧ファイザーのアップジョン事業部門)などの製品が在庫消尽をもって販売中止となるケースが見受けられます。

通常であれば、他社がその穴を埋めるはずですが、今のジェネリック業界にはその体力が残っていません

代替供給を引き受ける予定だったメーカーが、「やっぱりうちでも供給しきれない」と断念するケースも報告されており、

供給の受け皿が完全に消失してしまうリスクに直面しています。

 

そもそも、なぜこんなにトラブルが続くのか?

「それにしても、最近の製薬業界はトラブルが多すぎないか?」と感じる方も多いでしょう。

その根底には、2020年頃から表面化した「ジェネリック医薬品の信頼失墜」があります。

数年前、一部のジェネリックメーカーで不正な製造工程が発覚し、大規模な業務停止命令が出されました。

これを受けて、厚生労働省は全国の製薬工場に対して非常に厳しい査察を行うようになりました。

これは安全性の観点からは素晴らしいことですが、

現場のメーカーにとっては「これまで以上に厳格な品質管理」が求められることを意味します。

老朽化した設備や、タイトな人員配置で回していた工場では、わずかな不備も許されなくなり、

結果として「試験に落ちる」「製造を一時停止して確認する」という事態が頻発するようになったのです。

加えて、世界的な物価高騰や物流コストの上昇も重なっています。

ジェネリック医薬品は「薬価(国が決める値段)」が毎年引き下げられるため、メーカーにとって利益が出にくい構造です。

利益が出ない中で、厳しい品質管理と増産を同時に求められるという、

いわば「無理ゲー」に近い状況が続いていることが、供給不安定の真の原因と言えるかもしれません。

 

今後の見通しと、私たちにできること

残念ながら、テラムロ配合錠の出荷制限が数日や数週間で完全に解消される見込みは薄いと言わざるを得ません。

2026年現在も、各メーカーは「2027年以降の安定供給を目指す」といった長期的なスパンでの復旧計画を立てている状況です。

現場の対応としては、以下のような対策が取られています。

同一成分・別メーカーへの切り替え

在庫がある他社のテラムロ配合錠に切り替える(ただし、これもドミノ倒しで難しい場合があります)。

配合剤から単剤への分割

テルミサルタンとアムロジピンの2錠に分けて処方してもらう。

別の配合剤への変更

他の成分の組み合わせ(例:カンデサルタン+アムロジピンなど)への処方変更を医師に検討してもらう。

患者さんとしては、薬局で「いつものお薬と見た目が違う」「2種類に増えた」と戸惑うこともあるかと思います。

しかし、それは薬剤師さんが知恵を絞って、治療を中断させないために必死に在庫を確保した結果でもあります。

もしお薬の供給について不安がある場合は、遠慮なく主治医や薬剤師さんに相談してみてください。

今の状況において、最も避けなければならないのは、薬が入らないからといって自己判断で服用を止めてしまうことです。

最新の供給状況については、各製薬会社の公式サイトや「医療用医薬品供給状況データベース(DSJP)」などで随時更新されています。

現場の混乱はまだ続きそうですが、正しい情報を共有しながら、この厳しい局面を乗り切っていきましょう。

また何かお手伝いできることがあれば、いつでも声をかけてくださいね。

以上、ご参考になれば幸いです。

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