1999年から使われていたアリセプト(塩酸ドネペジル)に加えて、
2011年に、メマリー(メマンチン塩酸塩)、レミニール(ガランタミン臭化水素酸塩)、
リバスタッチ・イクセロン(リバスチグミン)の3種類の治療薬が相次いで保険診療で使用可能となりました。
この4剤についてポイントを整理します。
8つのポイント
①認知症の症状をわずかに改善し進行を遅らせる薬
治療薬というものの、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβの沈着を予防したり、除去するものは新薬の「レカネマブ」しかなく、
認知症の症状をわずかに改善する効果しかないことを理解しましょう。
▼「レカネマブ」については、私の過去ブログを参考にしてください▼
②コリンエステラーゼ阻害薬同士は併用できない
アリセプト、レミニール、リバスタッチ・イクセロンは、コリンエステラーゼ阻害薬という同系統の薬剤なので併用できません。
例えば、アリセプトを服用していた人が同系統の他の薬剤に変更する場合は、
アリセプトを中止して、
次の薬剤の開始量から始めて維持量まで持っていくことになるため、
薬剤の効果が切れてしまう期間が生じます。
有効量に達するまでに、アリセプトは1週間、メマリーは3週間、レミニールは4週間、
リバスタッチ・イクセロンは12週間かかります。
③副作用は、コリンエステラーゼ阻害薬は主に消化器症状だが、NMDA受容体拮抗薬は消化器症状がほぼ無い
副作用は、アリセプト、レミニール、リバスタッチ・イクセロン(コリンエステラーゼ阻害薬)では、
吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など消化器症状が主ですが、
メマリー(NMDA受容体拮抗薬)では、
消化器症状はなくて、めまい、便秘、体重減少、頭痛などがあります。
特にめまいは転倒に繋がりやすいので、危険な症状です。
リバスタッチ・イクセロンでは貼付部位のかぶれもあります。
④併用が効果的な組み合わせがある
メマリーは、アリセプト、レミニール、リバスタッチ・イクセロンと
併用することでより効果をあげるといわれています。
⑤保険診療では、認知症の進行度により、使用できる薬剤が決まっている
アリセプト:軽度、中等度および高度のアルツハイマー型
レミニール、リバスタッチ・イクセロン:軽度および中等度
メマリー:中等度および高度
⑥さまざまな剤型がある
それぞれの薬剤には、さまざまな剤型がメーカーから用意されています。
処方頻度が少ない剤型があるため、在庫については薬局との相談になります。
アリセプト:錠剤、口内溶解錠、細粒、ドライシロップ、内服ゼリー剤
レミニール:錠剤、口内溶解錠、液剤
メマリー:錠剤、口内溶解錠
リバスタッチ・イクセロン:貼付剤
⑦標準的な投与方法を理解する
アリセプト:1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量。
場合によっては、5mgを4週間以上服用後に10mgに増量することもあり。
症状により適宜増減可能。
レミニール:1日4mgを2回服用し、4週間後に8mgを1日2回服用するのが基本。
場合によっては、4週間以上服用後に12mg1日2回に増量することも可能。
メマリー:1日1回5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを服用する。
リバスタッチ・イクセロン:貼付剤で、1日4.5mgから開始し、4週間ごとに、9mg、13.5mgのように増量して、18mgが維持量となる。
9mgから開始も可能。
⑧薬理学
アルツハイマー型認知症の症状として、
脳内の記憶や思考に関わる神経の伝達物質であるアセチルコリンが減少することがわかっています。
コリンエステラーゼ阻害薬は、脳内のアセチルコリンの量を増やし、神経の働きを活発にします。
脳内で学習や記憶に関する神経伝達物質にグルタミン酸があります。
認知症では、異常タンパクがグルタミン酸の受容体を刺激して、
グルタミン酸が過剰になり過ぎることで神経細胞を障害し、機能異常を起こすのではないかと考えられています。
メマリーは、NMDA受容体を遮断して、過剰なグルタミン酸の刺激を防ぎます。
メマリーは、中等度から高度でのアルツハイマー型認知症の進行を抑える薬になります。初期に対しては効果が期待できません。
アルツハイマー型認知症がある程度進行した状態で使用することが一般的です。
以上です。お疲れ様でした。