心不全の治療方法を詳しく教えて
以下の文章は、2021年JCS/JHFS ガイドラインフォーカスアップデート版、急性·慢性心不全診療ガイドラインなどを参考にしています。
心不全の治療方法は、心不全の原因や症状、ステージによって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
心不全の治療方法
①薬物療法
心臓のポンプ機能を改善したり、血圧や心拍数を下げたり、むくみを減らしたりする薬を服用します。
代表的な薬には、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、強心薬などがあります。
②生活習慣の見直し
塩分や水分の摂取量を制限したり、適度な運動をしたり、禁煙や減量をします。
心臓にかかる負担を減らします。
③ペースメーカーやICDの装着
心臓のリズムを整えたり、不整脈を防いだりするために、心臓に小さな装置を埋め込みます。
ペースメーカーは心拍数を一定に保ち、ICDは心室細動などの危険な不整脈を電気ショックで治療します。
④心臓移植
心臓の機能が回復しない場合には、他の人の心臓と取り替える手術を行うことがあります。
しかし、心臓移植には適応条件や待機期間があり、実施できる人は限られます。
⑤原因疾患の治療
心不全の原因となる病気に対しても治療を行います。
たとえば、冠動脈疾患がある場合には、血管を広げる「バルーン治療」や、
新しい血管を作る「バイパス手術」を行います。
「 弁膜症 」がある場合には、弁を人工弁と交換する弁置換術を行います。
ペースメーカーとICDの違いを詳しくご紹介します。
ペースメーカーとICDは、どちらも心臓の不整脈を治療するためのデバイスですが、機能や適応には大きな違いがあります。
ペースメーカー
心拍数を正常に保つために低レベルの電気パルスを送る機械です。
徐脈性不整脈(房室ブロックや洞徐脈など)に対して使用されます。
ペースメーカーは、心房と心室の収縮のタイミングを合わせることで、心臓のリズムを調整します。
ICD(植え込み型除細動器)
ペースメーカーに除細動機能が組み込まれたデバイスです。
除細動機能とは、不整脈が起きた場合に自動的に電気ショックを与えて不整脈を止める機能です。
ICDは、頻脈性不整脈(心室頻拍や心室細動など)や突然死のリスクが高い人に対して使用されます。
ICDは、低レベルと高レベルの電気パルスの両方を送ることができます。
ICDには徐脈治療(ペーシング)機能もあります。
ペースメーカーと同じく心拍数を正常に保つために低レベルの電気パルスを送る機能です
ICD自体ではなくリード(電気ショックコイル)から送られます。
徐脈治療(ペーシング)機能は、特に洞徐脈で洞結節が悪い人や房室結節が悪くなるリスクが高い人に対して有効です。
さらに、ICDにはCRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)という特殊な種類もあります。
CRT-Dは、a.重症心室性不整脈に対する植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator; ICD)の機能、
b.心不全に対する両心室ペースメーカー(Cardiac Resynchronization Therapy; CRT)の機能を両方兼ね備えています。
致死性の不整脈を合併した心不全患者さんに適応になります。
以上が心不全治療のまとめです。
このような症状を抱えている患者さんが、いらっしゃるということを理解して頂ければ幸いです。