▶【新型コロナウイルス感染症】飲み薬最新アップデート

抗菌薬・感染症
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【新型コロナウイルス感染症】飲み薬最新アップデート

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療は、パンデミック初期の病院での点滴治療から大きく進化し、

現在では自宅で服用できる経口抗ウイルス薬(飲み薬)が、治療の柱の一つとなっています。

これらの飲み薬は、ウイルスの増殖を初期段階で抑え込み、特に重症化リスクの高い患者さんの入院や死亡を防ぐことを目的としています。

しかし、どの薬も服用には厳格な条件と注意点があり、誰もが自由に飲めるわけではありません。

ここでは、現在日本で主に使われている3種類の飲み薬について、

その特徴、具体的な飲み方、そして最も重要な注意点を、最新の情報に基づいて分かりやすく解説します。

 

1. ゾコーバ(エンシトレルビル フマル酸)

ゾコーバは、日本で開発され、緊急承認を経て一般流通している比較的新しい経口薬です。

 

主な特徴

ターゲット

ウイルス増殖に必須な酵素(3CLプロテアーゼ)の働きを阻害し、ウイルスの複製を防ぎます

投与対象

12歳以上の小児および成人。

他の二剤と異なり、重症化リスクの有無に関わらず、症状のある患者さんに処方が検討されることがあります。

臨床症状の改善

主に症状の改善までの期間を短縮することが臨床試験で示されています。

発熱、咳、のどの痛みなどの主要な症状が早く治まることが期待されます。

費用負担

現在は公費支援が終了しており、他の病気の治療薬と同様に、自己負担割合に応じた費用(3割負担で約1.5万円程度など)が発生します。

用法・用量と服用開始のタイミング

  • 服用期間: 5日間
  • 服用方法: 1日1回
  • 1日目3錠(375mg)
  • 2日目〜5日目1錠(125mg)
  • 血中濃度を速やかに上げるために、初日のみ多く服用する特殊な飲み方です。

重要な注意点

症状が発現してから72時間以内(3日以内)に服用を開始する必要があります。

発症から時間が経つと、十分な効果が得られない可能性があります。

 

特に重要な注意点

妊娠と授乳

妊婦または妊娠している可能性のある女性は服用できません(禁忌)。

動物実験で胎児への影響が報告されています。

また、服用中および最終服用後2週間は授乳を避けることが推奨されています。

薬の飲み合わせ(併用禁忌)

他の薬との相互作用(飲み合わせ)が非常に多い薬です。

特に、一部の降圧薬、高脂血症治療薬、抗不整脈薬など、持病で服用している薬がある場合は、

必ず医師や薬剤師に「お薬手帳」を見せて確認する必要があります。

 

2. パキロビッドパック(ニルマトレルビル/リトナビル)

パキロビッドは、2種類の有効成分(ニルマトレルビルとリトナビル)が組み合わされた合剤です。

 

主な特徴

ターゲット

ゾコーバと同様に、ウイルスの複製に必要な酵素(3CLプロテアーゼ)を阻害します。

投与対象

成人または12歳以上で体重40kg以上の小児のうち、重症化リスク因子(高齢、基礎疾患など)を有する患者。

重症化抑制効果

臨床試験(EPIC-HR試験)において、ワクチン未接種の高リスク群で入院・死亡のリスクを大幅に減らす高い有効性が示されています。

パック包装

1回に服用するニルマトレルビル(2錠)とリトナビル(1錠)が1セットで包装されており、飲み間違いを防ぐ工夫がされています。

用法・用量と服用開始のタイミング

  • 服用期間: 5日間
  • 服用方法: 1日2回、朝夕に、ニルマトレルビル2錠とリトナビル1錠の計3錠を同時に服用します。
  • 重要な注意点: 症状が発現してから5日以内に服用を開始する必要があります。

 

特に重要な注意点

薬の飲み合わせ(併用禁忌)

パキロビッドの大きな特徴であり、最大の注意点が他の薬との相互作用の多さです。

含まれるリトナビルという成分が、他の多くの薬の代謝を邪魔するため、薬の血中濃度が急激に上がり、重篤な副作用を引き起こす可能性があります

一部の抗不整脈薬、抗凝固薬、鎮痛薬、睡眠薬など、多岐にわたる薬剤が併用禁忌です。

普段飲んでいる薬をすべて確認し、服用できない場合は他の治療法が選択されます。

腎機能・肝機能障害

腎臓や肝臓に重い障害がある患者さんには投与が禁止または用量調整(パック300の処方)が必要です。

 

3. ラゲブリオ(モルヌピラビル)

ラゲブリオは、ウイルスの遺伝子情報に誤りを生じさせ、ウイルスの増殖を抑える仕組みを持つ薬です。

 

主な特徴

ターゲット

ウイルスの遺伝子(RNA)の複製過程で、故意にエラー(変異)を大量に起こさせ、ウイルスを弱体化(エラー・カタストロフィ)させます。

投与対象

18歳以上のうち、重症化リスク因子を有する患者。

重症化抑制効果

臨床試験では、プラセボ(偽薬)と比較して、入院または死亡のリスクを中等度に減少させる効果が示されました。

錠剤化

以前はカプセル剤のみでしたが、最近では錠剤も発売されており、服用しやすさの改善が図られています。

用法・用量と服用開始のタイミング

  • 服用期間: 5日間
  • 服用方法: 1日2回、朝夕に1回4カプセルまたは4錠(計800mg)を服用します。
  • 重要な注意点: 症状が発現してから5日以内に服用を開始する必要があります。

 

特に重要な注意点

妊娠と授乳

妊婦または妊娠している可能性のある女性は服用できません(禁忌)。

動物実験で胎児への影響が報告されています。

また、服用中および最終服用後4日間は授乳を避けることが推奨されています。

相互作用

パキロビッドやゾコーバと比べると、他の薬との飲み合わせ(相互作用)のリスクは少ないとされていますが、

持病の薬やサプリメントも含めて必ず医師・薬剤師に伝えましょう。

生殖能のある患者

服用中は、性交渉の際に避妊をする必要があります(男性も服用終了後一定期間避妊が必要です)。

 

全ての飲み薬に共通する大切なメッセージ

新型コロナの飲み薬は、感染症の治療を大きく前進させましたが、

以下の3つの点は全ての患者さんに共通する非常に重要な注意点です。

早期投与が命

どの薬も発症からできるだけ早くゾコーバは3日以内、パキロビッド・ラゲブリオは5日以内服用を開始しないと、十分な効果が期待できません。

症状が出たら速やかに医療機関を受診してください。

自己判断で中断しない

症状が改善したからといって途中で服用を止めると、

ウイルスが完全に排除されず、再燃したり、生き残ったウイルスが薬剤耐性を獲得したりするリスクがあります。

必ず医師の指示通り、最後まで飲み切ってください。

薬の併用確認の徹底

特にパキロビッドゾコーバは、日常的に服用している薬との組み合わせによって重篤な副作用を引き起こす可能性があります。

処方を受ける際は、服用中の全ての薬、サプリメント、健康食品を必ず医療従事者に伝えてください。

 

最後に

これらの飲み薬は、重症化を防ぎ、新型コロナとの戦いを自宅で乗り切るための強力な武器です。

正しく理解し、医師・薬剤師の指導のもと、適切に使用することが、ご自身の健康、そして公衆衛生を守ることにつながります。

ご自身の服用可否や費用負担については、必ず最新の情報を医療機関にご確認ください。

以上、ご参考になれば幸いです。

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