▶無呼吸症候群とレム睡眠・ノンレム睡眠の関連について教えて!

薬剤師の皆様へ
この記事は約6分で読めます。
無呼吸症候群とレム睡眠・ノンレム睡眠の関連について教えて!

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と、私たちの睡眠を支える「レム睡眠」「ノンレム睡眠」のメカニズムについて、詳しく解説します。

夜しっかり寝ているはずなのに、昼間に耐えがたい眠気に襲われたり、頭が重く感じたりすることはありませんか?

その背景には、睡眠中の「脳と身体のモード切り替え」と「呼吸の停止」が深く関係しています。

 

1. 睡眠の二段階:レム睡眠とノンレム睡眠の役割

私たちの睡眠は、一晩のうちに「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という2つの異なるステージを交互に繰り返しています。

およそ90〜120分の周期で一晩に4〜5回ほど繰り返されるこのサイクルが、心身のリカバリーに欠かせない仕組みです。

 

脳を休める「ノンレム睡眠」

ノンレム睡眠は「脳の眠り」と呼ばれます。

睡眠の深さによってステージ1〜3(従来は1〜4)に分類され、特に深い段階である「深睡眠(ステージ3)」では、脳の活動レベルが低下し、脳の疲労回復や成長ホルモンの分泌、細胞の修復が行われます。

 

身体を休め、記憶を整理する「レム睡眠」

一方、レム睡眠(Rapid Eye Movement sleep)は「身体の眠り」です。

このとき、脳は起きているときに近いアクティブな状態にあり、夢を見たり、日中の記憶の整理や感情の処理を行ったりしています。

その反面、身体の全身の骨格筋(自発的に動かせる筋肉)の張力が著しく低下し、身体は文字通り「だらんと脱力した状態」になります。

 

2. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が引き起こす睡眠構造の崩壊

睡眠時無呼吸症候群(閉塞性睡眠時無呼吸症候群:OSA)は、睡眠中に気道(空気の通り道)が狭くなったり塞がったりすることで、何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)する病気です。

呼吸が止まると、体内の酸素濃度が急激に低下(低酸素血症)します。

すると、命の危険を感じた脳が緊急警報を発し、一時的に睡眠状態から目覚めてしまいます(覚醒反応)。

本人には起きた自覚がなくても、脳は夜間に何十回、何百回と叩き起こされている状態です。

この結果、本来スムーズに行われるはずの睡眠サイクルが断片化してしまいます。

深いノンレム睡眠の消失

  脳が深いノンレム睡眠に入ろうとした瞬間に無呼吸と酸素不足が起こり、強制的に浅い睡眠へと引き戻されます。

そのため、脳の疲労を癒す「深睡眠」がほとんどとれなくなります。

レム睡眠の分断

  レム睡眠へ移行する手前で途切れてしまったり、レム睡眠中に激しい無呼吸が発生して中断されたりします。

いくらベッドの中に8時間いたとしても、実質的には「極めて質の低い浅い睡眠」を延々と繰り返しているだけになってしまい、

これが「どれだけ寝ても疲れが取れない」「昼間に強烈な眠気が来る」という症状の根本原因です。

 

3. レム睡眠とノンレム睡眠で異なる無呼吸の「現れ方」

近年、睡眠医学の研究やPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)のデータ解析が進むにつれ、「無呼吸がどの睡眠ステージで多発するか」によって症状の出方やリスクが異なることが解明されてきました。

 

レム睡眠中に起きる無呼吸の危険性

レム睡眠中には、全身の筋肉が脱力します。

これには舌の根元(舌根)や喉の周りの筋肉(上気道開大筋)も含まれます。

そのため、もともと気道が狭い人は、レム睡眠に入ると一気に気道が潰れやすくなります。

さらに、レム睡眠中は自律神経が不安定になりやすく、呼吸のコントロールも不安定になりがちです。

その結果、レム睡眠中に発生する無呼吸は、

「無呼吸の時間がより長くなりやすい」「血中酸素濃度の低下(デサチュレーション)がより深刻になりやすい」

という特徴があります。

 

ノンレム睡眠中に起きる無呼吸

一方、ノンレム睡眠中に多発する無呼吸は、

主に構造的な要因(肥満による首回りの脂肪、顎の小ささ、扁桃肥大など)が強く影響します。

ノンレム睡眠は一晩の睡眠時間の多く(約75〜80%)を占めるため、ここで無呼吸が多発すると、一晩全体の無呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)が一気に跳ね上がることになります。

 

4. 注目される病態:「レム関連睡眠時無呼吸症候群(REM-related OSA)」

最新の睡眠医学において特に注目されている病態の一つが、「レム関連睡眠時無呼吸症候群(REM-related OSA)」です。

これは、全体の無呼吸指数(AHI)はそれほど高く見えない(軽症〜中等症レベル)にもかかわらず、「レム睡眠の時だけ集中的に激しい無呼吸が起こる」というタイプです。

 

REM-related OSAの特徴と臨床的リスク

女性や若い世代にも多い

  一般的な無呼吸症候群は中年以降の男性に多いイメージがありますが、このレム関連タイプは女性や比較的若い世代、極端な肥満がない人にも多く見られることが知られています。

一般的な検査数値で見落とされやすい

  一晩全体の平均値(総AHI)で見ると「軽度」と判定されやすいため、見逃されたり治療の対象外と判断されがちです。しかし、

朝方のレム睡眠の時間帯に急激かつ深刻な酸素不足に陥っています。

心血管系や代謝への悪影響

  レム睡眠中の急激な酸素低下と交感神経の過剰な緊張は、

夜間高血圧や血糖コントロールの悪化、動脈硬化、あるいは抑うつ状態などのメンタルヘルスの悪化に深く関与している

ことが近年の研究で指摘されています。

 

5. 正しい治療がもたらす「睡眠の劇的な変化」とレムリバウンド

睡眠時無呼吸症候群の標準的な治療法であるCPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)などを開始すると、患者さんの睡眠構造には驚くべき変化が現れます。

気道に空気を送り込んで塞がりを防ぐことで、途切れていた呼吸が正常に戻り、脳が不必要な警報を出さなくなります。

すると、長期間奪われていた「深いノンレム睡眠」と「レム睡眠」が一気に取り戻される現象が起こります。

特に治療初期に見られるのが「レムリバウンド(REM rebound)」と呼ばれる現象です。

これまで無呼吸によって妨げられていたレム睡眠を補おうと、脳が一時的に通常よりも長い時間、深いレム睡眠を作り出します。

このとき患者さんは、

「何年かぶりに鮮明な夢を見た」「朝起きたときの頭のすっきり感がまったく違う」「頭の中の霧が晴れたようだ」

といった劇的な熟眠感を実感することになります。

 

6. まとめ:質の高い睡眠を取り戻すために

睡眠時無呼吸症候群は、単に「いびきが大きい」「途中で息が止まる」という表面的な問題だけではありません。

その本質は、

「脳と身体に必要なノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルを破壊し、夜間の身体を深刻な酸素欠乏にさらす病気」です。

特に「レム睡眠中の無呼吸」のように、一見軽度に見えても身体に大きな負担をかけているケースもあります。

  • 十分な時間を寝ているのに日中の眠気が強い
  • 朝起きたときに頭痛や口の乾き、だるさがある
  • 家族からいびきや呼吸の停止を指摘された

このようなサインがある場合は、睡眠クリニックなどの専門医療機関でPSG検査(睡眠ポリグラフ検査)を受け、

自分がどの睡眠ステージでどのような呼吸障害を起こしているのかを正確に把握することが、健康で快適な毎日を取り戻す第一歩となります。

以上、ご参考になれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました